月収80万円が激減、シングル母が感じる無力感 コロナであぶり出されたシングル家庭の現状
食べ盛りの高校生と中学生の息子3人を育てている別の女性は、パート先の居酒屋が時短営業になり、月々の収入が2万〜3万円減ったと嘆く。
「減収分はフードバンクや親に頼るなどして何とか埋め合わせしています。かけ持ちで働く弁当店も経営不振なので、仕事をさらに増やそうかと考えています」
女性は、話が子どものことに及ぶと急に小声になり、目に涙を浮かべた。
「コロナで子どもが変わっちゃったんです。とくに高校受験を控えている次男が。学校が休校したため、ふさぎ込むようになりました。おまけに進学先の特待推薦枠を外されてしまい……。だから私も今は、あまり人に会いたくないです」
そう言い残し、女性は足早に帰っていった。
減収などの影響を受けるシングルマザー達
長引くコロナ禍で、女性の貧困問題があらためて浮き彫りになっている。厚生労働省によると、母子家庭の平均年間収入は243万円と、父子家庭の420万円をはるかに下回る。この数字だけでも、母子家庭が貧困状態に陥りやすいのは火を見るよりも明らかだが、コロナ禍がさらに追い打ちをかけ、なかには死を意識する女性もいた。
「子育てパレット」が実施するフードバンクの参加には、24時間対応している子育て相談用のLINEアカウントへの登録が必要だ。登録者は当初、10人ほどしかいなかったが、新型コロナの感染拡大に伴って急増し、3月26日時点で346人と30倍以上に膨れ上がった。
代表の三浦りささん(56)が、コロナ禍の参加状況を説明する。
「フードバンクの参加者枠は40人ですが、告知をしたら申し込みが殺到し、5分以内に埋まってしまいます」
多いときは40人の枠に倍以上の問い合わせが入ったため、1カ月に1回開催のところを2回に分けて対応した月もあった。申し込みはほかの支援団体にも広がり、足立区でフードバンクを実施する団体や施設がコロナ前は3カ所しかなかったのに、今では12カ所へ拡大した。
参加するママたちの多くは、パートをはじめとする非正規雇用で働いていたため、コロナ禍で切られては職探しという綱渡りのような日々を送っていた。三浦さんが続ける。
「シングルの母親たちは子育てがあるために残業ができず、どうしても限られた時間でしか仕事ができません。そうした制約に加えて、責任の重い正社員の仕事に就くのは負担が大きい。この結果、飲食やサービス業での非正規に落ち着くのが実情です」