小野寺優・ニフコ社長--自動車用にとどまらず、工業用ファスナーを軸として切り口増やしたい
自動車用ファスナー(留め具)など樹脂部品を製造するニフコの業績回復が鮮明になってきている。経済危機の影響で、2009年1~3月期は四半期決算で創業以来初の営業赤字に転落。09年3月期通期の営業利益も半減したが、自動車生産の底打ちと、内部の経費削減努力により、前10年3月期は減収ながらも増益で着地したもようだ。決算発表に先立ち、ニフコの小野寺優社長に足元の業績動向と、今後の戦略を聞いた。
--経済危機の前と後で、大きく変わったことはなんでしょうか。
社員の意識が大きく変わりました。ニフコは創業以来、単月でも赤字を出したことのない会社で、ずっと順調に業績を伸ばしてきました。ところが、リーマンショックのあおりで09年1月から5月まで、月次で赤字が続いた。工場の稼働率が50%割り込み、部分閉鎖や派遣社員の削減などに踏み切らざるをえなかった。こうした経験は始めてのことでした。
この危機的状況下、各現場の社員がコスト意識に目覚め、無駄をなくそうとがんばったので、固定費が大きく下がり、限界利益率が上がりました。結果、09年4~6月期には営業黒字になった。経理から「社長、100万の黒字です」と言われたときは、08年に社長になってから一番うれしかった。たった100万円ですが、赤字か黒字かは大違い。全社員が一生懸命結束し、コストを下げようとすればここまでできる、と自覚できたことが、会社にとってもよかったと思います。
--今11年3月期の重点課題は何でしょうか。
売り上げが落ちても、利益が出せる筋肉質な体になったので、今期はこの状態を維持していきます。日系メーカーに提供している二フコの提案力、あるいは技術力を、世界中の自動車メーカーに対して、同じような形で提供していきます。
具体的には、自動車向けでは中国の有力メーカーとの取引の幅を広げていきます。二輪車などオートバイ向けにも力を入れていきます。二輪車は、日系4社でほとんどグローバルのシェア持っています。今までは自動車向け部品が忙しくて、二輪車まで目に入りませんでしたが、二輪車にはまだまだ工業用ファスナーを使える余地が大きい。ただ、二輪車の開発拠点はほとんど海外なので、海外の設計・開発部隊へのアプローチを強化していきたい。