回転寿司の実力は「イカ」に出る! 大手回転寿司チェーン2店を食べ比べてみた【前編】
寿司でいちばん難しいのは「コメ」。シャリは温かいのが本来の寿司
河岸:ミシュラン三つ星の寿司職人にいわせると、寿司でいちばん難しいのは「コメ」みたいだね。精米してからの時間や季節によってコメの甘みは微妙に変わるし、店で炊いてからも、シャリの温度は刻一刻と変化するから。
N君:言われてみると、ここのコメは生温かいですね。僕が普段食べるお寿司は、もっとシャリが冷たいです。魚が腐ってダメなんじゃないですか?
河岸:いや、それでいいの。カウンター式の寿司屋で寿司職人が握るやつは、シャリが温かいでしょう。温かいシャリに新鮮なネタを載せて出すのが本来の寿司。それがいちばんおいしいから。
N君:へー、寿司のシャリは冷たいものだとばかり思っていました。
河岸:それはスーパーの寿司とダメな回転寿司ばかり食べている証拠(苦笑)。この店のシャリがおいしいのは、きちんとこの店舗で炊いているからだね。
N君:えっ? ほかの店は店舗で炊いていないんですか?
河岸:「酢飯は厨房で炊いている」と思っている人も多いけど、仕入れ品を使う店も多いね。そのほうが手間もかからないし、コストも安く済むから。各店舗に運ばれてきた酢飯を「寿司ロボット」に入れて、ひとつひとつシャリの形にしたものに、工場で切って運んできた冷凍品の寿司ネタを載せるだけ。
N君:「寿司ロボット」って何ですか?
河岸:トレイに入った酢飯を「寿司ロボット」に入れると、ひとつひとつ寿司の形になって出てくるの。ネットで検索すれば、ユーチューブの動画でも見られるよ。
N君:だから、アルバイトが多いのに、同じ寿司の形になるんですね。寿司ロボットを使っているかどうかは「寿司のシャリの形」に注目するとわかりますね。
河岸:ただ職人の手にかかれば、ひとつひとつ握っても、シャリはほぼ同じ形、同じ大きさになるよ。必ずしも「同じ形=寿司ロボット」とは限らない。だた、職人がいないような安い店で、きれいにそろった寿司飯が出てきたときは、それは仕入れた酢飯と思って間違いないね。
N君:「何でもある」ような安い居酒屋の寿司なんかは、その確率大ですね。
河岸:安い居酒屋では、寿司ロボットなんか置いてもコストに見合わないよ。そういう店は、すでに寿司の形にして冷凍された酢飯を解凍して使っていることが多い。回転寿司では、さすがに「冷凍酢飯」を使う店はないけどね。そんな店は、まずくて客が入らないから。
N君:確かに、安い居酒屋の寿司飯は特においしくない気がしますよね……。ただ、同じ回転寿司チェーンでも、いろいろ「差」があるのには驚きました。
河岸:同じネタでも、店内でカタマリから切って出すのと、工場で切ったものを店でただ載せて出すのでは、味が全然違う。シャリも同じ。このA店は社長さんが職人出身でしょう。だから、どういう状態で提供するのがおいしいのか、ちゃんとわかっているんだね。それを手を抜かずにきちんと実行している。
N君:総じて、A店は高評価ですね。マイナス点はありませんか?
河岸:アルバイトにも「切り方」「あぶり方」などの技術を教えようとしている姿勢は立派だけど、やっぱり人によって当たり外れが大きいね。皿によって、同じネタでも大きさが全然違ったり、巻き物の切り方が雑だったり。本当の寿司屋なら、一人前になるまでは、お客さんの前には出さないから。100円寿司だとそうもいかないから、まだまだの腕でもお客さんに出す寿司を握ってしまう。
N君:なるほど、大将がきちんと「品質管理」しているかどうかということですね。次は、大手回転寿司チェーンのB店に行ってみましょう!
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