サウジとロシア、「減産幅縮小で足並み」のわけ 異なる思惑ながら「OPECプラス」の枠組み堅持
ニューヨークの原油先物価格(WTI)は2020年4月に1バレル=マイナス37.63ドルをつけた後、プラス圏に戻ったものの、その後も30ドル台で推移していた。
2020年秋ごろにワクチン接種の見通しが固まると、価格はじりじりと上昇。3月に入ってバイデン政権による1.9兆ドルの経済対策が決まると、65ドル前後にまで上昇している。
IEA(国際エネルギー機関)は3月公表のレポートの中で、「2021年にはコロナ禍による原油需要の減少分の6割が回復する」という楽観的見通しを示している。しかし、コロナ変異株が広がり、インドなどでは感染者数が再拡大。フランスでも3度目のロックダウンが始まった。コロナの感染拡大の状況次第でIEA予測ほどに原油需要が回復しない可能性もある。
サウジとロシア、微妙な思惑の差
供給要因に目を転じると、OPECプラスという枠組みを維持し続けられるかも焦点だ。2020年春のマイナス原油価格の発端は、産油国同士の不和にあった。サウジとロシアが対立したことで協調減産の枠組みが崩れ、そこに新型コロナの影響が重なった。
今回、表面的にはOPECプラスによる協調減産の維持へ歩み寄ったサウジとロシアだが、両者の思惑には微妙な違いがある。国の財政収支が均衡する原油価格(財政均衡価格)はサウジが1バレルあたり60ドル後半なのに対し、ロシアは40ドル程度とされる。
サウジ経済は、石油産業への依存度が高く、原油価格が低迷すると経済が大きな打撃を受ける。2019年にサウジ国内で上場した世界最大の国営石油会社「サウジアラムコ」は、原油価格低迷に見舞われ、2020年12月期の純利益は前期比半減の約490億ドル(約5兆4000億円)に落ち込んだ。
これに対し、ロシア経済や財政は今の原油価格でも十分にやっていける。ロシアにとって、原油高があまりに進みすぎると自国通貨のルーブル高を引き起こし、ロシアの輸出産業にとってかえってマイナスとなりかねない。
足元の60ドル前後という原油価格は、さらなる価格上昇を望むサウジと現状の価格で増産を進めたいロシアの微妙な立場の違いを浮き彫りにする水準で、両国が自国の利害に固執すれば1年前のような原油価格の崩壊を繰り返しかねない。
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