中国が開発、350km「高速貨物列車」成功するのか 新幹線は「貨客混載」開始、欧州では実例もある

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一般的に高速輸送が求められるのは、消費者が通販で購入した商品をいち早く届けるサービスや法人間の書類のやりとり、付加価値の高い生鮮品といった「小荷物」であり、従来型の貨物列車による大量の農産物や大型機械などの輸送とはマーケットが異なる。英語ではこうした「小荷物」をクーリエ(Courier)、「貨物」をフレート(Freight)と呼び分けている。高速貨物列車のターゲットはクーリエだといえるだろう。

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中国ではこれまでにも、旅客用の高速列車を使用し、人が両手で運べる程度のプラスチック箱に小荷物や書類を入れて輸送するといったことが行われてきた。この程度であれば、従来の旅客駅での取り扱いが可能だ。しかし今回の高速貨物列車は側面に大型のドアを備えており、航空機に貨物を搭載するときに使われるULD(Unit Load Devices)のようなコンテナなどを利用する前提であることがうかがえる。

中国国鉄の貨物部門である中鉄快運は2018年、深圳を拠点とするクーリエ輸送業者・順豊速運(SF Express)に株式45%を譲渡。「最後の1マイル」と呼ばれる個人宅や法人への配達サービスを担う民間企業とともに小荷物輸送業のシェアを磐石にしようとする姿勢が読み取れる。ちなみに、順豊は2018年、それまでドイツポストDHLが持っていた中国と香港でのサプライチェーンをそっくり買収している。

「高速貨物列車」欧州には実例

中国の鉄道界は「我が国が世界初の貨物高速列車車両を生んだ」と胸を張るが、旅客用高速列車の改造による貨物列車や高速郵便列車であれば、すでに欧州に実例がある。

例えばイタリアでは、もともと旅客用の高速列車だったETR500形の初期型車両を改造して貨物輸送を行っている。「メルシタリア・ファスト(Mercitalia Fast)」と呼ばれ、同国の鉄道貨物会社であるメルシタリア・レール(Mercitalia Rail)が2018年から運行している。12両編成で、こちらも747カーゴ1機分の積載量を誇る。

もともと時速300km運転可能な高速列車を改造しただけあって「世界初の高速貨物列車」とうたっているが、貨物列車としての最高時速は180km。高速旅客列車が乗り入れる各都市に向けて路線網を拡大する計画があるが、現時点では1路線にとどまっている。

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