中国が開発、350km「高速貨物列車」成功するのか 新幹線は「貨客混載」開始、欧州では実例もある

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

こういった国々の場合、「貨客混載」ならさらに取り組みは簡単だろう。トラックのような車にバラ積みの段ボール箱を載せ、列車の真横まで運んでそのまま積み込めばいい。海外の高速列車は荷物ラックの収容量が大きかったり、乗客の自転車やスーツケースを積み込むための荷物スペースが存在したりするケースが少なくない。

2019年に行われた新幹線による鮮魚輸送実証実験の様子(撮影:尾形文繁)

一方、日本で新幹線を使った貨物や小荷物輸送に取り組むとなると、現状のままでは大量・高頻度のサービスを期待するのは難しそうだ。旅客利用に特化した現在の設備を使っての対応では、運搬用の車両や装置などが使えず、人の手に依存することとなる。

今後、新幹線による荷物輸送を本格的に推進するとすれば、荷物の積み下ろしの場所やその所要時間、トラックなどほかの輸送手段とのコスト差などが課題となるだろう。

高速貨物列車は航空輸送の代わりになるか

では、高速鉄道網が航空輸送の代わりを担う可能性はあるのだろうか。

欧州において、航空輸送から高速鉄道へのモーダルシフトが起こるとすれば「環境問題への解決を図るため」という理由が考えられる。しかし、トラックによる排気ガスの削減を目指すのであれば、「トラックがそのまま乗れる貨車」がすでに実用化されており、わざわざコンテナだけを高速で運ぶモチベーションはあまり感じられない。

一方、中国ではどうだろうか。高速貨物列車開発の目的としては環境問題よりもむしろ「輸送コスト削減への手段」として導入される意義が大きい。中国の物資輸送における手段別の割合は、トラックがおよそ75%、水運が16%で、鉄道による輸送は10%を下回っている。現地の研究者の間では、「鉄道輸送のシェアを最大25%まで上げれば、輸送コストの削減が図れる」との期待がある。

また、中国のGDPのうち、輸送関係が占める割合は15%で、これは日本やアメリカの2倍に達する。こうした背景から、政策的にまったく新たな手段でコスト圧縮の手段を求められている事情もある。

日本で新幹線の客室を使った宅配便輸送が始まる中、中国では100トンもの荷物を運ぶ高速列車が登場した。スケールの差は一目瞭然だが、高速鉄道による荷物輸送は今後、世界的に注目を集めることになるだろうか。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事