イギリスのBBCは、ワクチン陰謀説が欧州ではイギリスよりフランスで、はるかに広がっていると指摘しています。ワクチン陰謀説とは、「ワクチン開発が異常に早かったのは、巨大資本が莫大な収益を見込んで科学的治験を大幅に省いて実用化しており、非常にリスクが高いからだ」「ワクチンはDNAを改変してしまう」「ワクチンには追跡カプセルが入っている」といったたぐいのものです。
とくにフランス語のSNS上では、陰謀説の拡大は科学的根拠を欠くものや完全に誤報と思われるものも含めて拡散を続けています。BBCの独自調査によれば、フランス語で極端なワクチン忌避内容を共有するページのフォロワー数は、2020年に約320万人だったのが、3月には約410万人に増加したといいます。
事実、陰謀説を信じる人は私の身近にも少なからずいて、驚かされることはたびたびです。例えば、ワクチン接種拒否者の中にはベジタリアンや徹底的菜食主義のビーガンも含まれています。筆者のビーガンの友人、フランソワ氏は「ワクチンにはわれわれが接種を禁じている内容物が含まれる。それも公表されていない」とまことしやかに話しています。
ノーベル賞学者が唱えた「コロナは武漢で作られた」説
振り返れば、新型コロナウイルスのパンデミックが本格化した昨年4月、「Pourquoi Docteur(お医者様教えて)」というフランスのウェブサイトにおいて、感染症の専門家で2008年にノーベル生理学・医学賞を受賞したフランス人のリュック・モンタニエ博士が、中国・武漢感染症研究所でウイルスが動物由来でなく、人工的に作られたという説を述べ、大騒ぎになりました。
ノーベル賞学者の前代未聞の指摘は、アメリカのトランプ政権が主張する感染症研究所からの流出事故という指摘とも重なり、中国がウイルスを意図的か単なる不手際でばらまき、パンデミックを起したというストーリーにもつながりました。
その後、驚くほど速く主要メディアが火消ししたため、モンタニエ説は消されました。が、フランスでは今でも、西洋人の人口を減らすための中国陰謀説などが根深くあり、それが昨年来のアジア人襲撃事件の急増にもつながっているわけです。
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