全知全能の神を「老人として描く」ことの違和感

なぜ我々の知る神は「人間」に似ているのか?

なぜ神は「老人」として描かれることが多いのか?(写真:gldburger/iStock)
彫刻、絵画、物語などで描かれる「神の姿」は、いつも人間に似ている。そこにはらむ、疑わしさとは? 評論家の呉智英氏と文学者の加藤博子氏による対談本『死と向き合う言葉:先賢たちの死生観に学ぶ』より一部抜粋・再構成してお届けする。

呉智英(以下、呉):シェリー・ケーガン(イェール大学哲学教授)の『「死」とは何か』という本が、いまもベストセラーになっています。加藤さんも、これをカルチャーセンターの授業で使っているそうですが、非常によくまとまっている。もとが大学の講義だけあって、要点を非常に巧みに、しかもわかりやすく解説している。世界各国で翻訳出版され、累計40万部以上のベストセラーというのも、もっともだと思う。

加藤博子(以下、加藤):私はカルチャーセンターで、ケーガンの本を受講生の皆さんと精読しています。高齢の方々こそ、どう死んでいったらいいのか、残り少ない日々をどう過ごすか、死をどう捉えたらいいのかと、考えています。

尊厳死の問題もあります。誰もが、自分の思うように死にたいんですよ。死にたくないわけではない。人様に迷惑をかけずに死にたいと、切に願っている。悔いなく死ぬためには、死をどう考えればよいのか、それが問われている本だと感じて、ケーガンの本を読みたいと思っておられるのです。誰にでも必ず訪れる死を、ただ恐れるのではなく、むしろさまざまな考え方を知りたいということですね。

「死」とはいったいどういうものか?

:ユヴァル・ノア・ハラリ(1976〜/歴史学者)の『サピエンス全史──文明の構造と人類の幸福』と訳者(柴田裕之)が同じです。同じ訳者が気に入っただけあって、非常に明快で、かつ網羅的な叙述の仕方は共通してるものがあると思ったね。

加藤:ケーガンは、道徳哲学、規範倫理学が専門。1995年の着任以来、毎年開講されている「死」をテーマとしたイェール大学の講義は、つねに人気が高いようです。『「死」とは何か』という本は、その講義をまとめたものですね。

ただ、私はケーガンの議論には、限界があると思うのです。死とは、実は悪いものではないという見方が示されていくのですが、そのとき彼は、死を悪いものと捉えるのが一般的だという前提に立っています。死は怖いし、誰もが死にたくないと思っているでしょう、しかしそうでもないのです、というふうに議論を進めていく。だから、いや、もう死にたいんだよ、別に死が嫌なわけではないんだよ、うまく死にたいだけなんだよ、と思っている者にとっては、そこですでに疎外感が漂います。

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