東日本大震災、被災地企業の明暗「10年の記録」 ベテラン映像作家の記録がBCPの学習教材に
東日本大震災で被災した水産加工会社の教訓を、中小企業の事業継続計画(BCP)や地域コミュニティーの防災計画策定に役立てようという取り組みが始まっている。
教材となっているのは、宮城県や岩手県で津波被害に遭った水産加工会社の苦闘を追った映像記録だ。経営者の被災体験のほか、事業再建の足かせとなっている借入金返済の重圧や補助金申請での苦労など、一般の報道では知ることのできない内容が詳しく記録されている。
10年かけて経営者の苦闘を記録
映像を制作したのは、映像制作会社SORA1の田中敦子社長だ。映像プロデューサーの田中氏は円谷プロダクションに勤務し、スクリプター(記録係)として「ウルトラマン」などの制作にかかわってきた。2011年の東日本大震災後、10年にわたって被災企業の再建に向けた苦闘を記録し続けてきた。
映像制作の経緯について、田中氏は「震災直後から避難所を訪ねて記録の重要性を経営者に説明し、生産品目の異なる5社の取材ロケを始めた。その後倒産した企業や、逆に震災を乗り越えて業容を大きく拡大した企業も含まれている。経営者に腹を割って話してもらうことで、テレビ映像では目にすることのできない再建への苦闘ぶりが記録されている」と説明する。
2019年には、撮りためた映像記録を企業のBCP対応に役立てることを主眼に編集し直し、『東日本大震災に学ぶBCP策定の教訓』と題したDVDを制作。これに、被災地以外の商工会などが着目し、会員企業のBCP対応や地域での防災の取り組みに活用しようという機運が高まった。
静岡県島田市の島田市商工会は2020年3月、田中氏のDVDを使って会員企業を対象にBCP策定セミナーを実施。参加した地元企業13社の経営者が熱心に聞き入った。
同商工会では、中小企業診断士を講師にしたセミナーの受講を通じて、中小企業庁が認定するBCP策定に必要な知識を習得した。中企庁の認定を取得すると、認定ロゴマークの使用が認められ、補助金支給や防災・減災設備の税制優遇などのメリットを得られる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら