東日本大震災、被災地企業の明暗「10年の記録」 ベテラン映像作家の記録がBCPの学習教材に

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宮城県塩釜市のかまぼこ製造販売会社の社長は、「(再建に必要な資金は)当初の予算より3割増し。予算のオーバー分は6000万円に相当した」と証言する。

震災前からあった借入金の返済について、金融機関は震災後の一定期間にわたって猶予した。ほとんどの企業がそうした支援策を受けたが、その情報が届かなかったために支援策を受けられず、借入金の返済に苦しむ企業もあった。

先代が急病で倒れたことで事業を引き継いだ石巻市の若手経営者は、震災直後からの混乱により、「その仕組みを知らなかった」という。大黒柱だった父親が経営から離脱した同社は事業再開後、多額の債務返済に苦しむ一方、売り上げが回復せず、自己破産に追い込まれた。田中さんはその一部始終を記録した。

地域防災にも活用されている

DVDを地域の防災に生かそうという取り組みも始まっている。高知市の下知地区減災連絡会は2019年10月、田中氏を招いてDVD上映会および講演会を開催。約30人の地域住民がDVD映像と田中氏の講演を熱心に聞き入った。

高知市内で開催されたDVD視聴会で講演する田中敦子氏(坂本茂雄氏提供)

市中心部から約1キロ離れた高知市下知地区は西側を除く三方向を川に囲まれ、海抜は0~2メートル。南海トラフ大地震では津波被害により長期浸水が予想されており、住民は約1万6000人、事業所数も1500近くを数える。

同地区では災害が起こる前から復興のあり方について明確にしておく事前復興計画を地区防災計画の一部として策定。意欲的な取り組みとして、全国的に注目されている。

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