「サッカー日韓戦」コロナ下の開催に踏み切る訳 「バブル」形式の対策、有観客試合の実績を作る

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「齊藤コーチは21日に集合場所に来て検査し、そのまま部屋に入って食事も1人で摂り、誰とも接触していない。22日の朝の検査で疑問があったので再検査をしたところ陽性が判明。隔離という流れになった。濃厚接触者もいない」と反町康治技術委員長は説明した。

試合開催に影響がないことを断言したが、このようなケースは今後の代表戦や五輪・パラリンピック期間にも起こりうる。徹底した検査と迅速な隔離を繰り返していくしか、スポーツなど各種イベントを行うすべはない。

「不要不急の大規模イベントは必要はない」という意見も根強いが、森保監督や代表選手たち現場もその意見に耳を傾け、エッセンシャルワーカーへの感謝を忘れていない。さらに言えば、スポーツなどエンターテインメント業界の従事者はそれで生計を立てている。飲食業界や観光業界のダメージに注目が行きがちだが、彼らは彼らなりにコロナと共存する道を探る必要があるのだ。

最善の運営方法を探る

サッカー界が日韓戦を筆頭に、26・29日のU-24アルゼンチン戦(東京・福岡)、30日のモンゴル戦(千葉)、4月8日と11日のなでしこジャパンのパラグアイ・パナマ2連戦(宮城・東京)の6試合を行うことで、最善の運営方法が見えてくるだろうし、徐々に来場者数を増やせるかもしれない。安全を優先することを前提にスポーツ的側面と経済的側面を両立させるメドがつけば、東京五輪にも前向きなムードが広がるはずだ。

さしあたって重要なのは、25日の日韓戦をスムーズに開催し、日本が宿敵を撃破してカタールW杯へ弾みをつけること。ベストメンバーの日韓戦で日本が国内で勝利したのは、2011年8月までさかのぼらなければならない。

札幌ドームで香川真司(ギリシャ1部・PAOK)と本田圭佑(アゼルバイジャン1部、ネフチ・バクー)の両エースがゴールして3-0で圧勝した10年前の再現が大いに期待される。その舞台に立っていた吉田を筆頭に、大迫勇也(ドイツ1部・ブレーメン)や南野拓実(イングランド1部・サウサンプトン)、冨安といった主力たちには、ピッチ内外での雑音をシャットアウトするような最高のパフォーマンスを見せてもらうしかない。

「日韓戦を戦う際、『足が折れても、体が壊れてもぶつかっていかなければいけない』という表現を昔はよくしていた。それを今の子たちにも伝えたい」と吉田が強調するように全力でぶつかり、サッカーのすばらしさを再認識させる最高の契機にしてほしい。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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