エンタメ界の神様が語る「逆張り成功論」

ソニー・コンピュータ元会長の丸山茂雄氏に聞く(上)

自ら“ナンバー2”宣言

三宅:さて、エピック・ソニーを始めたのはどういう経緯ですか?

丸山:当時はCBSソニーという合弁会社だったのが、創立10年目に業界1位になった。記念にもうひとつ別レーベルを作ろうということになって、そっちをお前がやれ、と言われて。それがエピック・ソニー。

三宅:任されたということですか。

丸山:いや、本当は任されてないんだ。ただそこのナンバー2になった。誰も「お前がナンバー2だ」と言ったわけじゃないけど。

三宅:そう思える布陣だったと。

丸山:そう、それでナンバー2宣言しちゃった。だって、みんな遠慮してて何も決まらないし、年齢は上から2番めだったからね。それ以来、今みたいに何でも好き放題言うキャラに変わったの。

三宅:そうすると会社も進み始めて、当然、みんな丸山さんにいろいろなことを相談するようになったわけですか。

丸山:下のやつらから見ると俺は、「使い勝手のいい上司」なのよ。部下が「こういうことをやりたいけど、いいですか」と言ってくれば、「いいんじゃねえか」と言う。問題が起こったときは、俺がいいと言ったんだから、俺が責任とるしかないじゃない。

三宅:決めてくれる、反対しない、リスクはとる。すばらしい上司ですね。

丸山:そうすると、大きな失敗さえなければ、人気は出るのよ。それに、そんなに無茶な案件は上げてこないしね。リスクといっても、タカが知れてたよ。それに俺は予算をとってカネを使わせてやるとか、そういうことが割と平気でできちゃう。基本的に、カネの使い方がうまいんだ。

三宅:使い方がうまいというのは、具体的に言うとどういうことですか?

丸山:だって使うのは人間だから、人におカネをつけるわけでしょう。何かできそうなやつがいる。そいつに予算を渡せば、そいつのアイデアが成立するかもしれない。その代わり、誰だったらうまくいくかを見極める。企画じゃなくて人を見るのが大事です。相手の顔がびびってたら、俺もびびるよ。そこを見てる。見誤ったらひどい目に遭うのは、俺とそいつなんだから。

三宅:どのくらいの単位でおカネをつけるんですか。

丸山:コンテンツビジネスだからそれほど大きい単位にならないけど、通常は何千万円。だけどよそが4000万円なら、俺は4億円ぶち込んじゃう。だいたい10倍くらいだね。

三宅:ちょっと待ってください(笑)。10倍ですか?

丸山:はなから10倍を突っ込むわけじゃないけれど、10倍を心づもりするわけ。そうするとショボショボ突っ込むよりは、成功の確率が上がるのよ。おカネをうまく使える人じゃないと、事業は伸びません。コスト削減も大事だけど、投資としてちゃんとカネを使わないと、新しいものは創れないから。

昔、ソニーがコロンビアの買収に数千億円を支払ったけど、ヒットが出なくて赤字が続いたことがあったんだよ。常識だとそんなのおかしいでしょう。でも、ハリウッドにはコミュニティがあって、「ここまで損をさせたんだから、仲間に入れてやろう」ということになった。それからいい仕事を回してもらえるようになって、業績も上がってきた。新しいビジネスをしようとすれば、損をする覚悟もないといけないんだよ。

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