総合商社は、世界に類例のないビジネスモデル 三井物産・槍田会長×ライフネット生命・出口会長(3)

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――当時、特に心に響いた本や、どなたかの言葉はありますか。

槍田:これは極めて具体的なことですが、日本のある経営者の方が、「槍田さん、あんたはもし今カッコよく辞めたらさっぱりするかもしれないが、2年ごとに社長が引責辞任しているような会社は、10年は立ち直れないよ」と言ってくれて、それもずいぶん参考になりましたね。

――出口さんはいかがですか。

出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命会長兼CEO
1948年三重県生まれ。京都大学を卒業後、1972年に日本生命保険相互会社に入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当するとともに、生命保険協会の初代財務企画専門委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事する。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、同社を退職。2006年に生命保険準備会社を設立し、代表取締役社長に就任。2008年の生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社を開業。2013年6月より現職。

出口:ライフネット生命はまだマーケットシェア0.02%の赤字会社です。保険会社全体で40兆円を超える売り上げがある中で、76億円にすぎません。保険業界は黒字になるまで時間がかかり、ソニー生命さんでも13年かかったと慰めてくれる人もいますが、黒字になるまでは経営者というよりただのチャレンジャーです。

でもどんな仕事でも山あり谷ありということは、本当だなと思っています。忍耐というか我慢というか、自分と向き合ってどこまで自分をコントロールできるかがすごく大事だな、ということくらいは、ちょっとわかってきた気がします。

――そこも教養の一部でしょうね。

槍田:自己判断ですよね。「自分は断固としてこれで行こう」という判断が大事だと思いますよ。その自己判断を支えるのが、教養といわれるものではないでしょうか。教養とかバックグラウンドがないと、周囲の雰囲気とか、外側の意見とか、人からどう思われるかというようなことに左右されてしまいます。

好きこそものの上手なれ

――おふたりにとって理想というか、あこがれの教養人や実業家などはいらっしゃいますか。

槍田:私がお付き合いしている経営者の方々は、みなさんいろいろな経験を積まれて経営者になっておられるので、タイプや個性は違いますが、立派な人ばかりです。名前を挙げたらキリがないので、とても選べないというのが正直なところです。

出口:僕もそう思います。ご存命の方や身近な方は恐れ多いので、遠い昔の人ということで、いつもクビライ・ハンの名前を挙げています。なぜなら彼は、死ぬまで自分に諫言してくれる人を探し続けていたんですね。あれだけの大帝国をつくった人でも、自分にはまだまだ足りないところがあるのではないかとつねに自分を戒め、「お前は裸の王様や」とボロクソに言ってくれる魏徴(ぎちょう)のような人を探し続けた。その姿勢がすごく好きです。

――最後にビジネスパーソンへのメッセージを一言いただけますか。

槍田:僕は今でも何か興味を持つとすぐ見に行って、話を聞いて、またそれを人に話すということをよくやっています。それを繰り返していくことで、ずいぶん人生が豊かになりますし、今日話した教養みたいな部分もずいぶんカバーされるのではないかと思います。やっぱりいやいや勉強するよりも、自分が関心や興味のあることを追いかけるのがいちばんいいですよね。勇気を持って好きなことをやればいいと思います。

出口:たくさん人に会い、たくさん本を読み、たくさん旅をする。これに尽きるような気がします。でも何を読んでいいかわからない、どこへ行けばいいかわからないなら、それは自分の興味のあるものや好きなものを突き詰めればいいと思います。「好きこそものの上手なれ」で、「この100冊を読まないと教養がない」と言われたところで、興味がなければ読んでも身に付きません。好きなものを自分が腑に落ちるまで掘り下げること。ほかにはないと思います。

(構成:長山清子、写真:大澤 誠)

東洋経済オンライン編集部

ベテランから若手まで個性的な部員がそろう編集部。編集作業が中心だが、もちろん取材もこなします(画像はイメージです)

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