郵政改革法案は、邦銀の信用力にマイナスの影響も《ムーディーズの業界分析》


VPシニア・アナリスト
山本哲也

亀井静香郵政・金融担当相は3月24日、郵政事業見直し法案の骨子を発表した。法案では、ゆうちょ銀行(JPB)の貯金預入限度額を引き上げるとしており、同行の低コストでの資金調達シェアが高まることになるであろう。したがって、同法案は邦銀--とりわけ、JPBと営業基盤が重複している第二地方銀行、信用金庫、信用組合、JAバンク等の中小金融機関--の信用力に、マイナスの影響を与える可能性がある。

また、同法案には、政府による持ち株会社への出資比率を3分の1超とすることも含まれており、これにより政府によるJPBへの関与が継続し、JPBの完全民営化は実現しないことになる。

JPBへの貯金預入限度額は、現行の1人当たり1000万円から2000万円に引き上げられる。同法案は、4月中に国会に提出される見通しで、政府では、6月ごろの法案成立、2012年4月の施行を目指している。郵便貯金の預入限度額の引き上げは、法案成立と同時に行われる予定である。

短期的には、JPBの貯金預入限度額の引き上げが、邦銀の資金調達コストや流動性に与えるインパクトは限定的とみられる。上述のすべての銀行では、巨額の余剰流動性を抱えて苦しんでいる(09年3月期末時点の預貸率[預金残高に対する貸出残高の比率]は、第二地方銀行78%、信用金庫56%、信用組合57%、JAバンク27%)。預金者が政府関与の残るJPBへ預金シフトを行った場合、銀行の投資管理リスクを軽減する、というプラスの影響も考えられる。

JPBの貯金は徐々に減少しているが、その残高は依然として大きく、09年12月末時点で177兆円に上る。郵便貯金の預入限度額が引き上げられると、貯金残高は減少に歯止めがかかるか、あるいは増加に転じるものとみられ、JPBは日本最大の預金受け入れ金融機関の地位にとどまるとみられる。

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