SBホークスが「ファン目線の発信」に成功した訳 “ホークスと結婚した女"加藤和子の挑戦

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なぜホークスは「女性目線」「ファン目線」の発信に成功したのか?(画像:福岡ソフトバンクホークス公式YouTubeより)
ソフトバンクホークスの「ファン目線」「女性目線」が成功したのは、ある女性の努力があったからであった。スポーツライターの喜瀬雅則氏の新書『稼ぐ! プロ野球 新時代のファンビジネス』より一部抜粋・再構成してお届けする。

ツイッター、インスタグラム、YouTube、フェイスブック。こうした「SNS」の存在が、プロ野球を「伝える方法」を激変させている。もはや、これらの「メディア」を活用すれば、誰でも、どこでも、いつでも、あらゆる内容のものが、自分の手で発信できる。

新聞が、テレビが、独占的に伝えてきた「情報」の位置づけが揺らいでいる。そして、野球という「コンテンツ」を握っている球団が、自らその情報を発信するようになってきた。2021年(令和3年)1月4日現在、ソフトバンク、ロッテ、オリックスの3球団が持つ公式アカウントでの「フォロワー数」を確認してみよう。

福岡ソフトバンク
ツイッター:100.7万、インスタグラム29.4万、YouTube14.5万
千葉ロッテ
ツイッター80.1万、インスタグラム15.8万、YouTube10.9万
オリックス
ツイッター36万、インスタグラム12.2万、YouTube4.28万

さらに、日本新聞協会調べによる「スポーツ紙の発行部数」の推移も見てみよう。

1997年(平成9年)650万部
2002年(平成14年)581万部
2008年(平成20年)493万部
2013年(平成25年)387万部
2019年(令和元年)293万部
2020年(令和2年)264万部

単純比較できる数字ではないことを承知のうえだが、3球団の公式ツイッターのフォロワー数を合わせた数字は、スポーツ紙の発行部数に迫る勢いでもある。

だからこそ、球団発の情報発信が、ますます重要になってくる。ファンと選手を、ダイレクトにつないでいく。その「メディア」としての役割を、球団も担い始めている。

ホークスの発信を支える加藤和子

球団だからこそ、メディアよりも選手との距離感をより近く取れる。そのメリットを存分に生かすことで、選手の、ひいては球団への興味や関心を引き寄せることができる。ソフトバンクのSNS発信には、ファン目線の優しさが伝わってくる。絶妙な“視線の位置”を生み出しているのは、かつて地元・福岡のテレビ局でスポーツキャスターを務めていた1人の女性リポーターだ。

正式な肩書は「広報室球団広報課オフィシャルリポーター」。黒のグラウンドコートと黒のジャージ姿は、女性リポーターの華やかさからは程遠い。その左肩には、つねにマイク付きのカメラがぶら下がっている。

加藤和子の入団は2006年(平成18年)のこと。ソフトバンクが「オフィシャルメディア」を発足させるのにあたって「その立ち上げに誘ってもらった感じでした」。

1978年(昭和53年)生まれの加藤は、福岡大学を卒業後、タレント活動中だった2002年(平成14年)12月から、福岡放送(FBS)で毎週日曜日夕に放送されているスポーツ番組「夢空間スポーツ」のキャスターを2年間務めていた。

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