SBホークスが「ファン目線の発信」に成功した訳 “ホークスと結婚した女"加藤和子の挑戦

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なんで、女がいるんだ。そんな奇異のまなざしで見られ、ストレスで体調を崩した頃があって、今の“立ち位置”を見つけた。その優しい視線が、ファンにも受け入れられている。球団の公式ツイッターのフォロワーは100万人を超え、ホークスオフィシャルレポーターの肩書をつけたうえでの「加藤和子」のツイッターにも16万人を超えるフォロワーがいる。それだけの人たちが、試合前の円陣を見て気持ちを盛り上げ、試合後の勝利のハイタッチで、喜びを分かち合う。

ホークスと結婚した女

博多出身、九州を代表する漫才コンビ「博多華丸・大吉」の博多華丸が、加藤の八面六臂の活躍ぶりに、こんな異名を贈ってくれたという。

「ホークスと結婚した女」

「どうなんでしょうね。イコールホークスというイメージがついているのは、すごくうれしいんです。褒め言葉のほうになるのかな?」

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まさしく“鷹一筋”。鷹ガールの姉御格ともいえる立場だからこそ、その姿に憧れる女性たちが増えている。「球団で働きたい」「加藤さんみたいな仕事につきたい」と相談してくる女性は、ひきを切らない。球団には、加藤宛のファンレターならぬ、人生相談の手紙が届けられるという。

「表向きには、ホークスをずっと好きでいてくれたら、なれると思いますよ、といった感じなんですけど。裏向きだったら? なんだろうな? この男社会を耐え抜ける人がいいのかな?」

前例がない道を、加藤は歩き続けてきた。その中でつかんだのは「ファン目線」を大事にすることだった。まるで、自分がその場にいるような感覚になる。

そう思わせるのは、カメラの角度や、テクニックではない。感動を、喜びを共にしたい──。加藤が選手と共有している喜びが、ファンにダイレクトに伝わるからだ。

喜瀬 雅則 スポーツライター

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きせ まさのり / Masanori Kise

1967年、神戸市生まれ。スポーツライター。関西学院大経済学部卒。1990年、産経新聞社入社。1994年からサンケイスポーツ大阪本社で野球担当として阪神、オリックス、近鉄、ダイエー、中日、アマ野球の番記者を歴任。2008年から8年間、産経新聞大阪本社運動部でプロ・アマ野球を担当。『産経新聞』夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。2017年7月末に産経新聞社を退社。以後は、業務委託契約を結ぶ西日本新聞社を中心にプロ野球界の取材を続けている。

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