3月施行「改正会社法」押さえておくべき点とは 取締役の報酬の決定方針の「透明性」を求めた

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具体的には、金銭報酬に関しては、報酬額や計算方法をどのように決定するかについて、また、報酬の決定を代表取締役などに一任している場合には、具体的に誰にどこまでの権限を一任しているかなどについて、報酬の決定方針の内容として取締役会で決議する必要があります。

このように、取締役の報酬について、現在の取り扱いを大きく変えるものではないものの、現在よりは少し踏み込んだ形で、その決定方針の「透明性」を求めたのが、今回の改正といえます。

また、公開会社である株式会社は、こうした報酬の決定方針の内容の概要を、事業報告という、定時株主総会の際に株主に送付する書面で、株主に開示しなければならないことになりました。

また、上場企業では近年、金銭による固定報酬だけではなく、業績連動型報酬や、株式や新株予約権などの金銭以外の報酬を支給する例が増えつつあります。今回の改正では、報酬のタイプが多様化しており、また取締役の報酬が、取締役が適切に職務執行するための動機(インセンティブ)づけの機能を持っているという実情に合わせて、取締役の報酬に関して株主総会で決議すべき内容などが改められました。

「会社補償」に関する新たなルールも

最後に、3つ目として、「会社補償」や「会社役員賠償責任保険」(D&O保険ともいいます)のルールが新設されました。

会社が取締役や監査役などとの間で、それらの役員が、職務執行に関して、

①法令違反が疑われ、または責任を追及する請求を受けたことに対処するために支出する費用や、

②第三者に生じた損害の賠償責任を負う場合の賠償金や和解金を、会社がその役員に対して補償することを約束する契約のことを、「補償契約」といいます。

例えば、ある会社の取締役が、会社が行った取引に関して談合が疑われるとして公正取引委員会から調査を受けた際、その取締役が弁護士に対応や助言を依頼した場合、その弁護士費用については、この補償契約を締結していれば、その取締役は会社に対し、弁護士費用を補償してくれと請求することができます。

これまで、こうした補償契約に基づく会社補償というものが法律的に認められるかどうか、必ずしも明確ではなかったのですが、今回の改正で、会社補償が認められるための内容や手続きがルール化されました。

今まで日本では補償契約に基づく会社補償はあまり普及していなかったのですが、今回の改正でルールが明文化されたことから、今後は導入を検討する企業も増えるものと思われます。

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