3月施行「改正会社法」押さえておくべき点とは 取締役の報酬の決定方針の「透明性」を求めた
会社の取締役などが、その職務執行に関して賠償責任等を負う場合に、その損害について保険金を支払う保険(会社役員賠償責任保険。D&O保険ともいいます)は、多くの上場企業ですでに導入されています。
しかし、このD&O保険についても、会社法にはルールがなく、どのような手続きが法律上必要なのか、必ずしも明確ではありませんでした。そこで、今回の改正では、D&O保険に関するルールが、会社法に初めて設けられました。
株主総会に関する2つの重要な改正
今回の会社法改正では、株主総会に関して重要な改正が2つ行われました。
1つは、「株主総会資料の電子提供制度」です。これは、定時株主総会に関して株主に送付する招集通知などの資料のうち、一定の資料について、紙で送る代わりに、会社のウェブサイトなどに掲載することで株主に提供したこととする、という制度です。
この制度が導入されると株主総会の実務に大きな影響を及ぼすため、上場企業にとっては非常に重要な改正内容なのですが、システムの整備などに時間がかかることから、この制度についてはほかの改正内容とは違って、今年3月1日からではなく、2023年(令和5年)3月末までに施行される予定です。
もう1つは、株主提案権のうち、株主が、1つの株主総会で、自らが提案する議案の内容を会社の招集通知に掲載せよと要求できる権利(議案要領請求権)について、提案できる議案の数が、今までは無制限だったのですが、今回の改正で、10個までに制限されました。
2012年に、野村ホールディングスに対して、ある株主が、100個もの株主提案を提出し、会社のほうで検討した結果、結局18個の議案を株主総会の議案として取り扱ったことがあり、話題になりました。そのほかにも、非常に多くの数の株主提案があった上場企業があったため、そうした事例を受けて、株主が株主総会の招集通知への掲載を提案できる議案の数が制限されることになったものです。
以上が3月1日に施行された、令和元年会社法改正の重要ポイントを解説しました。今回の改正は、コーポレート・ガバナンスに関する改革が進展する最近の日本の状況の中で、そうした状況に対応するために主に行われた改正である、と評価できます。今回の改正を受けて、日本企業のコーポレート・ガバナンスが今後どのように進展していくのか、引き続き注目されるところです。
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