新日石と新日鉱が人事制度をめぐり激しく対立--経営統合早々のJXグループに広がる暗雲

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新日鉱の従業員数は1万0834人(2009年12月末、連結ベース)。仮にその月例賃金水準を一気に2割も上げてしまえば、統合効果が大きくそがれてしまうのは必至だ。

といって、新日石側の月例賃金を新日鉱の水準まで切り下げるというのも、非現実的。下手をすれば「(新日石側の)暴動すら起きかねない」(関係者)。

新日石側は我慢できない

そこで浮上しているのが、新日鉱側の水準が新日石のそれに追いつくまで新日石従業員の昇給を凍結する、といった妥協案だ。

実際、新日石が誕生することになった1999年4月の旧日本石油と旧三菱石油の合併では、三菱側の月例賃金が日石側を上回っていたことから、三菱の賃上げを2年間ストップして水準を均一化したといういきさつもある。

とはいえ、日石-三菱の合併は実態からすれば、経営危機に陥った三菱の、日石による“救済”だった。旧日石従業員からすれば「こっちが追いつくまで三菱側が辛抱するのは当たり前」との思いが強く、三菱側にも「さして大きな不満と反発は生じなかった」(業界筋)とされている。

これに対し、今回の再編劇は両者首脳もしばし強調するように「まったく対等な立場での統合」(渡文明・新日石会長)だ。まして統合比率は新日石1.07対新日鉱1.00とわずかながら新日石が上。総資産や年商も新日石が新日鉱をことごとく凌駕する。

新日石従業員からすれば「そのわれわれがどうして我慢しなければならないのか」(中堅幹部)ということになろう。

悲劇を引き起こした新日鉱の人事制度

賞与制度をめぐっても軋轢が生じている。すでに導入している完全業績連動制(管理職対象)への一本化を求める新日鉱に対し、新日石側が難色を示しているためだ。

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