コロナ禍の今、日本医療の特徴を考えてみる この国の医療の形はどのように生まれたのか
日本の医療をほかの国々と比べた特徴が、新型コロナウイルスの影響の下で注目を浴びている。日本の医療提供体制については、目下、改革が進められている。ここ数年展開されていた提供体制の改革の青写真が描かれていた『社会保障制度改革国民会議』(2013年)の報告書には、「医療問題の日本的特徴」という項目があり、次のように書かれている。
公的所有主体の欧米、私的所有主体の日本
この種の話では、アメリカにおいても、公的病院、および公益的な民間非営利病院は総病院数のおよそ80%、全病床数の約85%を占めているということを言うと、けっこう驚かれる。
また、2001年の総合規制改革会議における、当時、厚生労働省大臣官房審議官(医政局・保険局担当)であった中村秀一氏の「株式会社の病院というのは、世界の医療提供体制の中でごく例外的、ヨーロッパではほとんどネグリジブルでありますし、多いと言われているアメリカでも、全体の25%ということで、われわれ自身、株式会社を入れるということが、それほど医療改革につながるふうには思っておりません」という言葉も歴史に残しておきたい言葉である。官僚が忖度なく正論を言えた時代の記録でもある。
どうして日本は、医師が非営利の医療法人を設立し、病院などを民間資本で経営するという形(私的所有)で整備されてきたのか? そして、コロナ禍で注目されるようになったことだが、なぜ民間の病院は中小規模なのか?
新型コロナの感染拡大の下、医療と経済、どちらを優先するかという問いかけがなされる中、こうした問いについて、いくつかの考える材料を準備できればと思う。ただし、文字数の制限もあるので、歴史的事実を淡々と論じるにとどめておこうと思う。
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