「M-1最高齢コンビ」がいま引っ張りだこのワケ 錦鯉「ノー・コンテクスト漫才」のインパクト

✎ 1〜 ✎ 39 ✎ 40 ✎ 41 ✎ 最新
拡大
縮小

あらためて文字で書いてあきれるのだが、それくらい彼らの漫才には、意味や展開が乏しい。ある極端な設定があり、その設定のままで終始する、極めてナンセンスなものが多い。M-1全16回の歴史の中で成熟した、ストーリーがどんどん展開し、その中で伏線が見事に回収される「コント漫才」(その代表がサンドウィッチマン)の正反対である。

言いたいことは、錦鯉の漫才は、昨年のM-1において、マヂカルラブリー、おいでやすこが、見取り図と差別化しただけではなく、極めてM-1的な「コント漫才」とも差別化しているということだ。また、その差別化のポイントは、ナンセンス性、つまり、意味や文脈から解放された「ノー・コンテクスト漫才」とでも言うべき特性であり、これが彼らの魅力の本質だと思う。

音楽評論家として想起するのは、1970年代後半のパンクロックのムーブメントだ。ハードロックやプログレッシブロックなど、いよいよ複雑でハイ・コンテクストになっていくロック音楽に対して、「もっとシンプルでいいじゃないか」と訴えるアンチテーゼとして、若者の圧倒的な支持を得たムーブメント。

錦鯉は、本質的にパンクロックだと思う。

2020年のM-1審査員の採点傾向

昨年のM-1で4位という絶妙な位置からチャンスを得た錦鯉だが、とはいえ、今年末のM-1では、彼らの優勝を期待したい。そこで、昨年M-1の審査員ごとの採点傾向を分析してみた。

全審査員の「採点平均」と、各審査員の採点を比較する。オレンジにしたところが「採点平均」に比べて3点以上高い、つまり全体の中で特化して高いところ。逆にブルーが特化して低いところとなる。

次ページ全国人気の獲得に必要な要素
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT