あらためて文字で書いてあきれるのだが、それくらい彼らの漫才には、意味や展開が乏しい。ある極端な設定があり、その設定のままで終始する、極めてナンセンスなものが多い。M-1全16回の歴史の中で成熟した、ストーリーがどんどん展開し、その中で伏線が見事に回収される「コント漫才」(その代表がサンドウィッチマン)の正反対である。
言いたいことは、錦鯉の漫才は、昨年のM-1において、マヂカルラブリー、おいでやすこが、見取り図と差別化しただけではなく、極めてM-1的な「コント漫才」とも差別化しているということだ。また、その差別化のポイントは、ナンセンス性、つまり、意味や文脈から解放された「ノー・コンテクスト漫才」とでも言うべき特性であり、これが彼らの魅力の本質だと思う。
音楽評論家として想起するのは、1970年代後半のパンクロックのムーブメントだ。ハードロックやプログレッシブロックなど、いよいよ複雑でハイ・コンテクストになっていくロック音楽に対して、「もっとシンプルでいいじゃないか」と訴えるアンチテーゼとして、若者の圧倒的な支持を得たムーブメント。
錦鯉は、本質的にパンクロックだと思う。
2020年のM-1審査員の採点傾向
昨年のM-1で4位という絶妙な位置からチャンスを得た錦鯉だが、とはいえ、今年末のM-1では、彼らの優勝を期待したい。そこで、昨年M-1の審査員ごとの採点傾向を分析してみた。
全審査員の「採点平均」と、各審査員の採点を比較する。オレンジにしたところが「採点平均」に比べて3点以上高い、つまり全体の中で特化して高いところ。逆にブルーが特化して低いところとなる。
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