コロナ禍で大激減する「名ばかり地方視察」 オンライン視察盛況で消える無用なお偉いさん

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「少しでも多くの地域の人に来てもらい、その地域の発展の参考になれば」と考え、貴重な時間を使って視察見学を受け入れる地域はたくさんあります。にもかかわらず、現地でのトラブルに始まり、視察後は「現地へのフィードバックゼロ」というのは、受け入れた地域も非常に消耗するものです。

実際、本気で視察見学に訪れる人は、ほとんどの場合「少人数」「自費」で申し込んで来ます。このように、本気の人というものは基本動作からして違うのです。

「若手中心」&「成果直結」の仕組み作りを

コロナ禍で、オンライン視察をいったん若手に任せたのですから、これこそチャンスとしたいところです。本来、視察して参考になった点を現場ですぐに生かせる若手にこそ、国内、海外問わずに視察に向かわせることのほうが大切なのです。

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もし視察がリアルに戻っても、若手を中心に視察に行かせるとともに、現場でその学びを実践する仕掛けを徹底してほしい。まず、意味不明なお偉いさんがくる視察見学は、人数を半分以下にしましょう。お偉いさんは自分でもお金を持っているのですから、視察するなら自身の財布で別に行ってもらいましょう。

ここは少人数の若手、とくに現場の一線で頑張っているような人たちにこそ、予算をさいて見聞を広げさせるほうが、組織の発展につながります。そのときにも完全にタダにするのではなく、少しでもいいので適切な負担は若手もすべきでしょう。それがなければ、若手でさえ、本気にはなりません。

同時に、人数を半減させたことで生じる「予算の余剰」を現場に生かすために投資すべきです。現地で学んできたことを生かすにしても、手元に一銭もなければ実現が難しいものは多々あります。視察予算の半分をプールし、視察から戻ってきた若手メンバーに新規事業を立ち上げさせたり、既存事業の改善につなげさせるため、しっかり投資しましょう。

コロナ禍によってあぶり出された、視察という名の「タダ飯旅行」というひどいリアルを見直し、若いメンバーに視察と挑戦の機会を作り出す。そうすれば、地域は大きく変わります。地域の未来は、人に対する投資以外にありません。

コロナ禍が明けた後には、本当の意味での「視察」が行われることを期待します。

木下 斉 まちビジネス事業家

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きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年生まれ。高校在学時からまちづくり事業に取り組み、2000年に全国商店街による共同出資会社を設立、同年「IT革命」で新語流行語大賞を受賞。

早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。

2008年に設立した熊本城東マネジメント株式会社をはじめ全国各地のまちづくり会社役員を兼務し、2009年には全国各地の事業型まちづくり組織の連携と政策提言を行うために一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立。2015年から都市経営プロフェッショナルスクールを設立し、既に550名を超える卒業生を輩出。2020年には北海道の新時代に向けた「えぞ財団」を仲間と共に発足している。また内閣府地域活性化伝道師等の政府アドバイザーも務める。

著書に『まちづくり幻想』『稼ぐまちが地方を変える』『凡人のための地域再生入門』『地方創生大全』等多数。

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