コロナ禍で大激減する「名ばかり地方視察」 オンライン視察盛況で消える無用なお偉いさん

✎ 1〜 ✎ 53 ✎ 54 ✎ 55 ✎ 56
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「少しでも多くの地域の人に来てもらい、その地域の発展の参考になれば」と考え、貴重な時間を使って視察見学を受け入れる地域はたくさんあります。にもかかわらず、現地でのトラブルに始まり、視察後は「現地へのフィードバックゼロ」というのは、受け入れた地域も非常に消耗するものです。

実際、本気で視察見学に訪れる人は、ほとんどの場合「少人数」「自費」で申し込んで来ます。このように、本気の人というものは基本動作からして違うのです。

「若手中心」&「成果直結」の仕組み作りを

コロナ禍で、オンライン視察をいったん若手に任せたのですから、これこそチャンスとしたいところです。本来、視察して参考になった点を現場ですぐに生かせる若手にこそ、国内、海外問わずに視察に向かわせることのほうが大切なのです。

『まちづくり幻想 地域再生はなぜこれほど失敗するのか』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

もし視察がリアルに戻っても、若手を中心に視察に行かせるとともに、現場でその学びを実践する仕掛けを徹底してほしい。まず、意味不明なお偉いさんがくる視察見学は、人数を半分以下にしましょう。お偉いさんは自分でもお金を持っているのですから、視察するなら自身の財布で別に行ってもらいましょう。

ここは少人数の若手、とくに現場の一線で頑張っているような人たちにこそ、予算をさいて見聞を広げさせるほうが、組織の発展につながります。そのときにも完全にタダにするのではなく、少しでもいいので適切な負担は若手もすべきでしょう。それがなければ、若手でさえ、本気にはなりません。

同時に、人数を半減させたことで生じる「予算の余剰」を現場に生かすために投資すべきです。現地で学んできたことを生かすにしても、手元に一銭もなければ実現が難しいものは多々あります。視察予算の半分をプールし、視察から戻ってきた若手メンバーに新規事業を立ち上げさせたり、既存事業の改善につなげさせるため、しっかり投資しましょう。

コロナ禍によってあぶり出された、視察という名の「タダ飯旅行」というひどいリアルを見直し、若いメンバーに視察と挑戦の機会を作り出す。そうすれば、地域は大きく変わります。地域の未来は、人に対する投資以外にありません。

コロナ禍が明けた後には、本当の意味での「視察」が行われることを期待します。

木下 斉 まちビジネス事業家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年東京生まれ。1998年早稲田大学高等学院入学、在学中の2000年に全国商店街合同出資会社の社長就任。2005年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業の後、一橋大学大学院商学研究科修士課程へ進学、在学中に経済産業研究所、東京財団などで地域政策系の調査研究業務に従事。2008年より熊本城東マネジメント株式会社を皮切りに、全国各地でまち会社へ投資、設立支援を行ってきた。2009年、全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事就任。内閣官房地域活性化伝道師や各種政府委員も務める。主な著書に『稼ぐまちが地方を変える』(NHK新書)、『まちづくりの「経営力」養成講座』(学陽書房)、『まちづくり:デッドライン』(日経BP)、『地方創生大全』(東洋経済新報社)がある。毎週火曜配信のメルマガ「エリア・イノベーション・レビュー」、2003年から続くブログ「経営からの地域再生・都市再生」もある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事