「ポテチのふりかけ」震災時を支えたご飯の記憶 今こそ思い出したい、食事が持つ「回復への力」

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さつまいもを「あえて」スイートポテトに!(イラスト:岡本将徳、画像提要:NHK)

たまたま自宅にあったサツマイモを、あえて焼き芋にせずに、木べらでスイートポテトにしたという人がいました(不安な中でも、木べらを使って一工夫ができたことで少し自分を取り戻せて「大丈夫。これからも、どうにかなる!」と前向きになれたそう)。

投稿の中には、熊本地震のときに、ポテトチップスをそのまま食べるのではなく、あえて粉々にして、ふりかけにしたというレシピを送ってくれた人もいました。

私はそのメニューを実際に試してみることにしました。のりしおにするか迷った末、うすしおを選び、湯せんしたレトルトのごはんを少しほぐして、ポテトチップスを細かく砕いてごはんにかけました。えいやと、一口。「いける!」ポテトチップスの塩気で、ご飯の甘さが際立ち、確かにふりかけのように食べられました。

「素材だけで食べるのと、少し手を加えて食べるのでこんなに違うなんて」

そう言えば、神棚にあった塩をおにぎりにかけて食べておいしかったという人がいましたし、食事の味も覚えていないほど弱り切った中で、農家の人がくれたたった一口分の高菜のおいしさで元気になれたというエピソードを送ってくれた人もいました。

食事が持つ回復への力

災害時の食事について著書のある宮城大学の石川伸一教授は、「災害時に“何もない中で工夫を重ねてモノを作るという行為”は被災した人の気持ちや自信を回復させる力がある」と話します。

被災地でストレスが続くと、どうしてもトラブルが起きやすくなるそうなのですが、そうした中で、食事のクオリティを少しでも上げようとすることには、そんな心の穴を埋め、もっと言えば、復興へ向かうのを下支えしてくれる力があるというのです。

東日本大震災を経た今、多くの専門家は「数日間をしのぐ非常食だけではなく、少なくとも1週間の食生活や栄養まで考えて準備するべきだ」と指摘します。

「大変だな」と思う方もいるかもしれません。しかし、投稿していただいた500とおりの思い出レシピを読むと、その対策は“いくつかのコツ”をしっかり押さえれば、強く身構えるものではないこともわかってきました。

では、そのいくつかのコツとは? 次回、詳しくお伝えします。

坪井 健人 思い出レシピ取材班

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つぼい けんと / Tsuboi Kento

大阪生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。朝の情報番組「あさイチ」の立ち上げに参加。NHKスペシャル「#あちこちのすずさん」や東日本大震災プロジェクト「#思い出レシピ」のプロジェクトマネジメントを担当。著書に「産後クライシス」(内田明香との共著・ポプラ新書)

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