食のリスク学 中西準子著
環境リスク学で画期的な問題提起を行った著者が、食の分野でのリスクに絞って持論を展開した書。
しばしばメディアや生協などは、運動家がこだわる、間違った「常識」を俎上に載せているが、その最たるものはリスク評価にかかわる誤解で、生起確率ばかり問題にして重篤度(生起時の深刻度)を軽視あるいは無視する傾向である。
安全と安心を一体のものとする議論や、食品汚染で濃度(ppm)ばかりが問題にされる風潮も科学的、統計的に検証され、論破される。
行政も民間もリスク学の本質にもっと学ぶ必要がある。その点、食の安全を考えるうえで提起されるデータ解析や接近法は、多分に論争的であるが極めて説得的だ。
ただし、コスト対効果という概念を加えて食の安全を考えるとき、行政、企業、消費者それぞれのコストをどのように調整するかという問題、多様な消費者の食の選択に際しての裁量評価については、まだ議論の余地はあるだろう。(純)
日本評論社 2100円
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