惜しい!「伝え方が残念」で人生損する人の盲点 せっかくの「中身」を活かす人、潰す人の微差

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別の見方をすると、この場合「何を伝えるか」は極めて明確です。自分がその人を愛していて、その思いを伝えたい。それは確かで、そこには迷う必要も、考えを整理する必要も一切ありません。問題はそれを「どう伝えるか」だけなのです。

仕事では「何を伝えるか」にばかり時間をかける

ここで話題を一変させましょう。自分が世界でいちばん入りたい会社の、最終面接に運よく漕ぎ着けたとします。そこで自分の魅力を伝える、3分間の「自己紹介」を考えてみてください。

これまでの経験、受賞歴や表彰歴、持っている資格や学歴、秀でているスキル、あるいは独自の仕事観や仕事哲学。伝えたいことはたくさんあるはずです。3分のスピーチに整理するには、「何を伝えるか」をよく考えなくてはいけません。

このような場合、面接までの準備時間が1週間あるとしたら、多くの人がその大半を、「何を伝えるか」の整理に使うのではないでしょうか。

一方で、それを「どう伝えるか」の準備にはほとんど時間を使いません。例えば自分の「仕事観」を伝えるのに、それをそのままストレートに伝えるという方法もありますが、自分の生い立ちや、そのきっかけとなったストーリーを通じて伝えるという手もあります。「突然で恐縮ですが、祖母の話をさせてください」と自己紹介を切り出してもいいわけです。

愛の告白ではあれほど時間をかけて準備をした「どう伝えるか」ですが、ことビジネスとなると、とかくないがしろにされがちです。しかし、人と人が言葉を使ってコミュニケーションする、という点では、愛の告白も面接の自己紹介も同じです。自分のことを好きではなかった異性に想いが通じ、その人が生涯のパートナーとなることがあるように、「どう伝えるか」は時に人生を大きく変える力を持つのです。

もちろん、本質は「何を伝えるか」で、それをしっかりと整理できていることが大前提です。「ただ口だけがうまい人」になっても仕方ありません。

しかし、伝える内容に真実がある、だけでは不十分なことが多いのです。そのうえで、「その真実をどう伝えるか」にも全神経を集中させる人がいたら、勝利の女神がそちらにほほ笑むのは疑うまでもありません。生涯のパートナーを選ぶにも「どう伝えるか」がものを言うのですから、その場その場のビジネス判断に「どう伝えるか」が影響を与えるのは、半ば必然です。

ビジネスパーソンは「どう伝えるか」に惑わされず「何を伝えるか」で公平に判断するべきだ、という意見もあるかもしれませんが、人と人とのコミュニケーションには必ずギャップが発生します。同じ言葉や事柄に対して、それぞれが別の先入観や前提知識を持っているからです。

相手が社長なら部長より専務、相手が専務なら課長より部長、など、立場が近しい人が持っていくと話が通りやすいのはそのためです。そうであれば、「何を伝えるかで公平に判断する」ことはシンプルに不可能なのです。それは能力や資質の問題ではありません。

次ページ「何を伝えるか」と「どう伝えるか」を分けて考える
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