「就職人気企業に飛びつく」日本人に欠けた視点 賞味期限がとっくに切れたかつての成功モデル

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ある程度まで環境に適応することは、働くため、ひいては生きていくために必要でしょう。しかし、自分の考えをもたないままに適応すると、今度はそこで行われていることを相対化することができなくなります。会社だけで通用する特殊なルールがそれ以外のところにも当てはまる普遍的なものに見えてしまうのです。

これは何も会社に限ったことではありません。業界のなかでそこにどっぷり浸かっている人は業界の常識を疑うことができなくなるし、さらにいえば、日本という閉じた世界に安住していて広い外の世界を見ようとしないから現状を打破する発想が出てこない、ともいえるでしょう。

「変化がない」時代はない

「この先も変化がない」と仮定すれば、先例にしたがったり周囲と同じやり方をしたりして知見を高めることは、確かに合理的な判断だといえるでしょう。

しかし、実際には「変化がない」時代などありえません。新型コロナがその典型です。そして、さらに現代は、起き続けた変化の結果をまとめて引き受けなければならない大変な時代です。変化はかつてより見えやすくなり、新たな局面が次々と展開しています。何も考えずに昨日と同じことをやっていたら間違える確率が高まる。「何が正しいのか」という問いに対しては、その都度、今までのやり方をリセットして最初から考えるほかないのです。

人間というものは、みなさんが思っているほど賢くはありません。たとえば、先ほど挙げた人気企業ランキングですが、ちょっと歴史をさかのぼってみると1945年は石炭、1950年は繊維、1955年は化学業界の企業が上位に名を連ねていました。いずれも当時の花形産業ですが、今では人気業種とは言いがたいでしょう。

でも、よく考えたら、同じ企業や業界がずっと右肩上がりで栄えていくほうがよほど不自然ですから、ピークをつければ下がるのは最初から明らかだったともいえます。現時点の花形産業に就職すれば高値づかみになる可能性がきわめて高い。それなのに、毎年学生が殺到するのはその時点でピークを迎えているような企業ばかり。要するに、最高学府で勉強しても、10年後、20年後を見通して行動することができない人がほとんどなのです。

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