対中批判が噴出、自民党で何が起きているのか タカ派議員が官僚を突き上げ、変わる政策過程

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タカ派議員の最大のターゲットは中国である。香港の国家治安維持法制定と民主化運動の弾圧、南シナ海のサンゴ礁の軍事基地化、新疆ウイグル自治区でのウイグル人の強制収用や強制労働問題という人権問題など、対中批判の材料には事欠かない。

さらに2021年1月、海上警備などを任務とする中国海警局の権限などを定めた海警法が施行されると、尖閣諸島周辺の領海で海警局の船舶が頻繁に領海に入り、日本漁船を追跡する活動を繰り返している。日本の実効支配を力によって揺るがそうとしていることは明らかだ。

怒りの矛先は外務省や防衛省の官僚に

当然、自民党内での中国批判が高まっているが、中国政府関係者と直接やり取りできるわけもないので、怒りの矛先は部会に出席する外務省や防衛省の幹部に向けられる。

「中国船の領海侵犯は、抗議だけでは効果がない。日本も行動すべきである」

「経済関係を重視するあまり、中国の人権問題に対して日本政府の対応は腰が引けているのではないか」

特に海警法に対する危機感は強く、「このままでは尖閣諸島が奪われてしまう」「海警法が国際法違反であるとはっきり言うべきである」という声も出ている。しかし、政府は公式見解として、海警法が国際法違反であるとは断定していない。

部会に出席している官僚は、「中国に対してあいまいな部分を明確にするよう求める」などと答えることしかできない。それが自民党議員の不満にさらに火をつけ、「尖閣諸島に石垣市の字名の標柱を立てるべきだ」などという極論まで飛び出している。

さらには海警法に対抗して、武力行使に至る前の状態を指す「グレーゾーン事態」でも自衛隊が出動しやすくするための「領域警備法」を制定する動きも出ている。

すでに述べたように、自民党の外交部会や国防部会がタカ派議員の威勢のいい声であふれかえるのは今に始まったことではない。これまでは多くの場合、そうした声が政府の政策に反映されることはなかった。部会はしばしばタカ派議員の不満のガス抜きの場となってきたのだった。しかし、菅政権ではどうも少々様子が違うようだ。

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