ところが、2021年卒の人事や面接官を対象にしたアンケート調査のコメントを見ると、「口下手」という言葉は皆無であり、「一生懸命」は「自分の言葉で一生懸命回答しようとしている学生」(メーカー・従業員300人以下)の1つだけだった。2020年卒までのコメントと大きく変わった。とても印象的だ。なぜこういう変化が起きたのか? ずばり、リモート面接(オンライン面接)だったからだと思う。
HR総研は、2020年10月末に「2021年&2022年新卒採用動向調査」を実施したが、2021年新卒採用の面接形式で「対面のみで実施」した企業は、大企業と中堅企業で1割程度ときわめて低かった。中小企業ではやや多く3割だが、全体的には8割がオンラインを活用した。
2020年にコロナ禍によって社会活動のオンライン化(テレワーク、出前やテイクアウトなどの巣ごもり消費、オンライン飲み会)が進んだが、新卒採用でもリモート面接が普及した。
企業と学生の双方に戸惑いがあった。企業は「素の学生が見えない」と言い、学生は「自分のアピールがストレートに伝わらない」ともどかしさを訴える。リモート面接は、隔靴掻痒で細かい感触が「得られない」「伝わらない」というのだ。
従来は「場」が重要だったが…
これまでの対面面接では、「場」が重要だった。今回のコメントにも、「待ち時間など社員が見ていない間の態度がいい」(情報・通信・300人以下)があるが、待合室での態度、名前を呼ばれてからのドアのノックと「入ります」という発声、ドアの開け方、歩き方、礼をしてからの着席という一連の行動が見られている。
だから服装が大事になる。髪の整え方、男性ならネクタイにも注意が必要だ。つまり全身が見られている。面接官の中には、入室して座るまででだいたいのことがわかると言う人もいる。学生も面接官を観察し、その反応に一喜一憂する。そういう「場」の情報がリモート面接ではなくなり、双方が戸惑った。
ただ、このような戸惑いは初期の反応であり、企業と学生の双方が短期間でリモート面接に順応した。そうすると、「着席までのマナーに注意しなくていい」「上半身だけなので服の準備が簡単」と楽なことを評価する学生が増えた。指定時間までに会場に行く手間と交通費の負担もなくなったメリットも大きい。
企業側のメリットも大きい。これまで参加がなかった、あるいは少なかった地方の大学生の参加が増えたという企業はとても多い。学生の準備も少なくてすむが、企業側も規定時間にディスプレイの前に座ってスタートすればいいので、受付や待合室などの管理が不要になる。
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