日本にも存在する?中国の「秘密結社」の正体 王道ではない中国の歴史を学ぶことの意義

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――実際に安田さんは秘密結社のメンバーとも接触を図っていますね。

2018年2月にカナダの南京大虐殺記念日の制定の動きを取材しに、トロントに行きました。そこで、対日歴史認識問題を追求している団体の取材をしたのですが、トロントの華人の同行を調べていると、その団体とは別に「洪門(ホンメン)」という名前が対日抗議活動の文脈のなかでたびたび登場したのです。この洪門こそ、通称「チャイニーズ・フリーメーソン」。現役バリバリの秘密結社です。

大学時代から、学術書でもたびたび目にした洪門が今こんなことになっているの?面白すぎる。そう思って取材を続けることにしました。

洪門であることに強い帰属意識を持つ

洪門の実態を探るために2018年12月に再びカナダを訪れます。このとき行ったのはバンクーバー。市内のチャイナタウンには、「洪門民治党」と書かれている3、4階建てのビルがあり、そこに突撃してみようと思いました。けれども、ドアマンのおじいちゃんは普通話どころか英語も無理で、どうやら広東語しか通じない。

そこで隣の建物の、華人コミュニティーのまとめ役的な団体である「中華会館」に取材のアポを入れてみることにしました。先方は快諾してくれて、4~5人の中華会館の偉い人が出てきたのです。

安田峰俊氏:1982年、滋賀県生まれ。中国ルポライター。立命館大学人文科学研究所客員協力研究員。著書『八九六四 「天安門事件」は再び起きるか』(KADOKAWA)が第5回城山三郎賞、第50回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。

彼らと話していると、「俺は洪門だ。バンクーバーの洪門の前代表だった」と言い始めました。中華会館の幹部たちには洪門のメンバーが混じっていたのです。さらに話も弾んで、チャイナタウンでご飯を食べに行くことに。

ご飯を食べていると、相手が洪門のメンバーかどうかがわかる、箸の置き方までも教えてくれました。それって洪門の秘密じゃないのと?思ってしまいましたけど(笑)。

彼らのことを調べていると、洪門には「自分が洪門である」という大きな帰属意識があることに気がつきました。そして、実際には秘密はないけれども、彼らは自分たちが世界の秘密を知っているかのような、イケている存在だと思っている。そこにも、どこか惹かれるものがありました。

――洪門は、中国共産党の衛星政党(政権政党以外に存在が許され、体制に協力する小政党)とも関わりがあるのが興味深いです。

中国には共産党以外に、8つの衛星政党があります。そのうちの1つが、中国致公党です。洪門と致公党は歴史的にも強いつながりがあり、致公党の前身の1つはアメリカの洪門です。最近でも、カナダのとある中国系の下院議員が南京大虐殺記念日を制定しようと運動をおこなっていた際に、バンクーバーの洪門と接触していました。彼女は過去に州議時代に、中国大陸の致公党員がカナダに来たときに接待もしています。

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