日本にも存在する?中国の「秘密結社」の正体

王道ではない中国の歴史を学ぶことの意義

バンクーバーにある洪門の施設(写真:安田氏撮影)
中国の秘密結社が世界各地で暗躍している事実はあまり知られていません。さまざまな謎につつまれている中国の秘密結社はどのような存在なのでしょうか。そして彼らは、いかなる役割を果たしているのでしょうか。『現代中国の秘密結社』を上梓したルポライターの安田峰俊氏にインタビューしました。

――そもそも、なぜ秘密結社に興味を持ったのですか?

大学の専攻が中国史で、大学2年生の夏から、中国の華南地域に位置する広東省・深圳に留学しました。中国史というと、一般的には史記や三国志などの世界を想像される方が多いと思います。でも、広東省は歴史や文化の面でも、日本で一般的に想像されがちな中国史のイメージとは全然違っていました。

中国は人口の大部分を占める漢民族と、55の少数民族で構成されています。また、漢民族のなかでも方言の差異は非常に大きい。例えば、中国では「普通話」と呼ばれる公用語が全国各地で話されていますが、2001年当時の深圳では(広東省中心部の方言である)「広東語」が大学構内でも共通の言語として飛び交っていました。さらには、潮州語や客家語など広東語以外のさまざまな方言も耳にし、漢民族と少数民族のボーダーラインはいったいどこにあるのか、興味を持つようになりました。

秘密結社は拠り所がない人たちが集まる

華南地域は、北京を中心にした漢民族の世界とは明らかに異質です。だからこそ研究したいと思い、いろいろ論文を読み漁っている中で、面白さを感じたのが、本の題材の「秘密結社」ともつながる、宗族(父系の同族集団)や、宗族同士の争いである械闘(かいとう)といったキーワードです。華南地域の農村部では、この宗族のつながりが人々の暮らしに密接につながっています。かつて、宗族は就職の斡旋や災害、治安対策などさまざまな相互扶助的な役目を果たしていました。

深圳がある広東省は、中国の南に位置し、気候にも恵まれ、お米などの作物も豊富です。清朝の時代、資源が豊かなことで人口は増えたのですが、全員をまんべんなく養えない小さな宗族や、そもそも宗族を持たない人もいる。そこで養えられなかった人たちがどうなるかというと、華僑として北米・南米や東南アジアに出ていくことになります。ちなみに、世界各地の中華街はそうした人々が集まって形成されていきます。

もともと中国は、政府が守ってくれず、寄る辺もない、自分でなんとかするしかない社会。だから、宗族のような血縁関係など、各コミュニティーでの結びつきが強い側面もあります。けれども、そうしたコミュニティーですら外れてしまう人が出てくる。そんな人たちが集まって形成されるものの1つが「秘密結社」です。拠り所がない人たちが、世界各地へと流れることで、ときには海外の社会で「秘密結社」が形成されることすらあります。

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