社内版「論語と算盤」を作成する清水建設、使命感を全社で問い直す《ものすごい社員教育》
今年1月月末に最終版が発行されるまでの約半年間、何度も赤字修正を入れたという宮本社長は、スタートガイドを活用した職場討議の場を設けることにも賛同。「ベテランが若い人としゃべることで刺激を受けることもある」と波及効果に期待する。
しかも、職場で討議するのではなく、単なる読み合わせで終わることを危惧。各編の最終ページには、「話し合ってみよう!!」という論点を列挙したコーナーまで掲載する念の入れようだ。
自己研鑽ガイドを活用 組織底上げで危機突破
スタートガイドが『論語と算盤』の『論語』部分とすると、『算盤』部分の自己研鑽ツールが、約1年前に発行した「まるわかり歩掛り活用ガイド」である。
歩掛り(施工数量÷工数)とは、作業効率の目安を定めた建設工事の専門用語で、現場の工程およびコスト管理に用いられる。たとえば図面に書かれていない細かな箇所をどう工事するかは、現場責任者の双肩にかかる。
判断や見通しが甘いと、清水が負担すべき工事費が膨らんでしまうので、歩掛りがカギを握る。
「以前は朝から晩まで現場を見回り、自分でデータを集めて協力業者などに作業を手配した。近年は施工要領書の提出などデスクワークが増え、同じようにやれと言っても難しい」(宮本社長)。そこで、ミドル層の現場責任者の要望を踏まえ、若手層が段取りのよい運営力を身につけられる冊子をまとめた。