社内版「論語と算盤」を作成する清水建設、使命感を全社で問い直す《ものすごい社員教育》

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 たとえば、一昔前なら通用した師匠と弟子という関係での現場施工ノウハウの伝承手法が、今の若手技術者にはなかなか通じない。

日常生活であれば許される服装や言葉遣いが職場にも持ち込まれ、これにまゆをひそめる古参社員の嘆きが散見されるようになった。

今木繁行執行役員(前人事部長)が指摘する「価値観の多様化」によるものであり、一企業がコントロールできるものでもないが、清水のような建設業にとって生命線であるチーム力が阻害されかねない由々しき事態だ。

社歴の差によって生じる世代間のコミュニケーションギャップを埋める人事政策面の仕掛けが、時代の要請となった。

2007年6月末に就任した宮本洋一社長は「チーム力の再生には現場力や人間力の強化が必要」との認識を表明。建築施工や支店トップの実体験を生かし、現場により近い感覚で、組織力の底上げに取り組む方針を打ち出した。

不祥事が重なって低下した従業員の使命感を呼び覚ます場として、社長直属の全社横断組織「ものづくり強化委員会」を08年1月に発足させる。同委員会は、傘下の3部会で具体的なアイデアの議論を始めた。

そんな中、宮本社長の意識改革運動に呼応するように、横浜支店の中堅幹部が、社内版『論語と算盤』ともいうべき若手層向けの自己研鑽ツールを同委員会に具申してきた。

若手層は、入社から5年程度を経過すると、仕事ののみ込みや、振る舞いに個人差の出やすい傾向がある。この差を見過ごすと、施工現場におけるコミュニケーションがうまく行かず、技術ノウハウをベテランから若手に伝えきれない状況が生じてしまう。これを放置すれば、安全やコスト意識にほころびが生じるとの懸念が現場で台頭した。

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