日本人は「ジョブ型雇用」の本質をわかってない 配置転換が当たり前の日本企業に染まった人へ

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対して、多くの日本企業はこれまで、職務や勤務地、労働時間などが限定されない「メンバーシップ型」と呼ばれる働き方を中心としてきた。総合職とも呼ばれ、営業職の人が畑違いの管理部門に異動になるような職種転換も当たり前に行われている。

「ジョブ型雇用」といえば、国を越えて人材の採用・活用を一元化したいグローバル企業や、熾烈な人材争奪戦の渦中にあるテクノロジー企業の一部の中で運用されるにすぎなかったが、現在では、グローバル化やテクノロジーと距離のある企業でも注目されつつある。

リクルートキャリアの「ジョブ型雇用」に関する人事担当者対象調査2020によれば、「ジョブ型雇用」導入は全体の12.3%。従業員規模が大きいほど導入率が高く、従業員5000人以上で19.8%という状況。導入企業の約7割は1年半以内に「ジョブ型雇用」を導入している。

会社に出てこなくてもよくなったことで

上記の調査結果でも言及されているが、その最大の要因の1つが、新型コロナウイルスの流行に伴う「働き方」の変革である。これまでは、同じ場所で同じ時間を過ごす中で、職場の空気を読むことで先輩や上司が求める仕事を遂行することができた。もっと言えば、会社に出てきさえすれば、日々の成果や成長はどうであれ、「働いている」とみなされていた。

一方で、1人ひとりが個別で働く「テレワーク」下では、メンバーは上司の求めていることを把握することが困難になり、上司の立場からすれば、非効率で非生産的な側面もある。だからこそ、各企業が仕事内容を明確に定め、その成果を評価する「ジョブ型雇用」へのシフトを検討し始めたのである。

現在は過渡期でもあり、さまざまな角度から「ジョブ型雇用」のメリット・デメリットが指摘されているが、“従業員側”の立場から「ジョブ型雇用」を考えてみよう

「ジョブ型雇用」によって生じる従業員にとっての最大の変化は、「会社から与えられたキャリアを歩む」のではなく、「自ら専門性を磨き、自らキャリアを歩む」ということである。

「メンバーシップ型雇用」の下では、会社の指示に従い愚直に努力をしていれば雇用は保障され、昇進もできることから、一定のやりがいを感じることができた。次のキャリアや仕事はすべて会社が与えてくれるため、従業員は自分のことで悩む必要もなく、目の前のことに集中すればよかった。高度経済成長期のように、飛躍的な経済成長を目指す日本にとってはそれが最適な方法だったのである。

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