過去約10年で見ても、2年に1回の診療報酬改定のない年度、つまり特別の医療政策が加わらない奇数の年度は、国民医療費が2~3%台の増加を示している。これは「自然増」とも呼ばれるが、背景には、医療技術の高度化、高薬価の医薬品の開発、国民の高齢化に伴う医療の需要増などがある、とされている。
国民医療費は近年において、経済の影響をほとんど受けていないのも特徴といえる。例えば、いわゆるリーマン・ショックの影響で2008年度、2009年度の国内総生産(GDP)は、それぞれ前年度比が4.0%減、3.4%減だったものの、それらの年度の国民医療費は、それぞれ同2.0%増(2008年度)、同3.4%増(2009年度)と増えた。
ちなみに、内閣府によると、2020年(1~12月)のGDPは前年比で4.8%減少しており、これは11年前のリーマン・ショック時とほぼ同じレベルである。とはいえ、2020年度の国民医療費については、経済の情勢はほとんど無関係で、主として新型コロナウイルス感染症の影響を受けている、と考えられる。
小児科、耳鼻咽喉科で収入が大幅減に
2020年度の概算医療費の動向について、もう少し分析しておこう。
医科に分類される概算医療費を入院と入院外(外来など)に分けて比較すると、入院のほうが減少幅は小さい。患者・国民において外来のほうが「不要不急」とされたのであろう。
特徴的なのは、診療科によって影響の程度が違うことだ。医科診療所のレセプトの点数に基づく2020年4~11月の前年同月比(前出の社会保障審議会医療保険部会資料)は、皮膚科、産婦人科がほぼ前年並みであるのに対して、小児科(単純平均で前年同期比27.8%減)、耳鼻咽喉科(同26.4%減)、外科(同11.4%減)のマイナス幅が大きい。
これは、あくまでも診療所/クリニックにおける診療科別の状況だが、中小規模の病院の外来診療科もそれに近い状況であると推測される。また、それらの診療科の受診が減った理由として、例えば次のような考察がなされている。
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