医療費が過去60年で例のない減少となった真因 「コロナ禍の受診控え」だけで片づけられない

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そのような状況において、2020年度の国民医療費の動向は、本当の医療ニーズをあらわす。すなわち、インフルエンザをはじめとする感染症が減るなど疾病構造が変化し、受診行動も変化した。

「受診抑制」は健康悪化につながっていない

また、「受診控え」あるいは「受診抑制」とも呼ばれる国民の行動は、短期的に見て、健康の悪化につながったわけではない。例えば、厚生労働省が今年2月22日に公表した人口動態統計速報によると、2020年の死亡数は138万4544人で、前年比0.7%(9373人)減。これは11年ぶりの減少である。

この約10年、高齢者の増加を背景に、死亡者数は毎年2万人前後の増加を続けていただけに、2020年は実質的には死亡者数が約3万人減少した、と見ることができる。

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新型コロナウイルス感染症による超過死亡などはなかった、と考えるのが妥当だ。いっとき、「火葬場が(新型コロナウイルス感染症による)死者であふれていて、火葬に何日もかかる」などという話がSNSで流れていたが、それはまったくのデマであったことが、2020年の死亡数からもわかるだろう。

新型コロナウイルス感染症の流行を契機とした「新しい生活様式」が続くのであれば、疾病構造も確実に変わっていく。それを踏まえて、医療の仕組み、医療提供体制も変えていかなければならない。国民医療費の動向は、そのための指標になる。

牧 潤二 医療ジャーナリスト

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まき・じゅんじ / Junji Maki

1950年生まれ。東京経済大学経済学部卒業。82年独立し牧事務所を開設。医療保険や診療報酬制度等について行政関係の動きを取材・執筆。主な著書は『官報の徹底活用法』(サンドケー出版局)、『在宅医療サービス徹底活用ガイド』(PHP研究所)、『すぐわかる介護保険』(KKベストセラーズ)、『詐病』(日本評論社)ほか。所属団体は、日本医学ジャーナリスト協会、日本医史学会、日本薬学会、日本写真学会など。

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