田原さん、「科学」で稼いでもいいですか? 田原総一朗×丸幸弘が激論「どうする日本の科学」

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田原:そのほかに、年に200以上のプロジェクトも回しているそうだね。

:はい。ベンチャーや企業研究所の新規事業立ち上げを支援するプロジェクトも手掛けています。たとえば化学しかやったことがない研究所のチームに、われわれのバイオやロボティクスのスキルをもったスタッフが加わったり、あるいはわれわれが提携している330の大学などの研究室、研究機関とつなぐことで、そこに広がりを生むお手伝いをしています。

全国の学校に無料配付する「someone(サムワン)」は毎号8万部を発行しています。企業や大学の研究機関向けにも「AgriGARAGE(アグリガレージ)」など複数の雑誌を発行していて、そこでは、「怪しい」けど次の種になりそうな研究を紹介しています。

田原 総一朗(たはら・そういちろう)
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーに。活字と放送、ネットなど幅広いメディアで活躍。2002年4月より早稲田大学特命教授として大学院で講義をするほか、次世代リーダーを養成する「大隈塾」の塾頭も務める。『日本の戦争』(小学館)、『塀の上を走れ 田原総一朗自伝』(講談社)『40歳以上はもういらない』 (PHP新書) など著書多数。

田原:でもSTAP細胞の件もそうだったけど、研究機関同士の競争もあるのに、そう簡単に科学者たちが知恵やノウハウを出してくれたりするものなの?

:それが、けっこう出してくれるんです。もちろん自分たちの専門領域のコア――主流の部分は秘密ですが、ほかの分野は、その研究機関からみれば亜流な「怪しい」部分については、出してくれるのです。というのは、彼らも何かと「つながりたい」というニーズがすごく強いんですよ。

脳科学とロボット工学などはそのいい例です。そんな本流ではないけど、可能性のある研究を見つけるために、当社のスタッフは全国の研究室に足しげく通ってます。

田原:そうやって生まれた製品からライセンス料をもらったりはしないの? あるいは、ミドリムシのような画期的な技術・発見を基にベンチャーを立ち上げて――というのが普通の考え方だよね? そういう会社の経営者になろうとは思わなかった?

:ライセンス料をもらったりはしません。僕たちは新しい技術、発見を次々生み出すことが目的なので、いったん世に出て、すぐに当たり前の存在になっていくものからおカネを得ることには、正直、関心がないのです。陳腐化するサイクルもどんどん短くなってきていますので。

それよりも重要なのは、そんな技術、発見を生み出すこと。だから僕はユーグレナみたいな科学ベンチャーをたくさん生み出したいのです。あるいは、インフラを備え製品化を得意とする大企業と、ベンチャーや研究室の「怪しい」科学をつないで、どんどん形にしていきたい。かつては大企業は僕たちなんか相手にしてくれませんでしたが、景気が悪くなる一方でイノベーションが求められる中、向こうから相談が寄せられることも増えました。

つまり、科学とビジネスが一緒に発展するプラットフォームを作りたいのです。これもまた「怪しい」話になってしまうのですが(笑)、でも、なんかすごい会社の源流をたどるとリバネスだったっていうふうになったら格好いいじゃないですか。そういう存在は今まで日本になかったんですよ。

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