”食のクールジャパン”を世界に売り込む男 日本の外食は世界で稼げるのか?

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日本の2つの課題

吉川氏は2007年頃から東南アジアの外食マーケットをリサーチしてきた。この地域は、人口が増え、GDP、可処分所得も増えている。このマーケットは“ブルーオーシャン”だと確信した。

「当時は和食といえないような“なんちゃって和食”の店が儲かっていました。我々がしっかり準備して本物を提供すれば、ひっくり返せると思いました。あとは本物の和食が受け入れられるタイミングを見極めることでした」

シンガポールでは、すでに“なんちゃって和食”は儲からなくなり、マーケットが本物に近づいてきていると吉川氏は見ている。

機が熟した今、吉川氏は「人」と「食材」の二つの課題をあげる。

一つには、日本人が外国で働くときにビザを発給してもらえる法整備が必要だ。また逆に、現地の人が日本で和食を学ぶためにもビザを発給してもらわなくてはならない。

「飲食店は労働集約型なので、従業員のレベルを上げることが店の底上げにつながります。挨拶、清掃、マニュアル通りに動く、ホスピタリティなど、日本人にとっては当たり前のことが難しい。日本特有の文化なので、現地では教えられません。日本で生活して教育する必要があります。もはや国がいう単純労働ではないんです。日本の文化を教えるためにビザが必要になるのです」

もう一点の「食材」とは、日本産の食材が通関できないという問題だ。たとえばフランスでは日本産の鰹節が輸入できない。でも中国産の鰹節は認められていて、中国人の経営する日本料理店で使われているという。オールジャパンで日本産の食材を入れられるように交渉していきたいと吉川氏は言う。

東南アジアの次は、北米、ヨーロッパ

こうして、日本人による日本料理店が世界各国にできていくとどうなるのか? それは日本で食べるフランス料理を想像するとわかりやすい。フランスの文化を体験するだけではなく、ワイン、チーズ、フォアグラなど、多くのフランス産の食材が消費されている。つまり、日本は世界で消費される、優良食材の生産基地となるわけだ。

さらに、日本文化が身近になれば、日本を訪れる観光客も増える。今はLCCを使うと東南アジアから往復一万円前後で日本に来られる。日本の魅力を体験し、日本食を食べたい、日本のものを買いたいという人が増える効果が期待できる。

「日本の食材を安く輸出できて、日本で人材を教育できるようになったら、日本の外食企業が世界を席巻する可能性は十分にあると思います。おいしい、ヘルシーな和食は、多くの人が自国の料理の次に食べたい料理にあげています」

将来は東南アジアだけではなく、北米やヨーロッパにも出ていきたいという。

「伝統的な和食だけではなく、ラーメンなど、日本の食文化を継承して日本で成功している経営者なら、世界中で通用すると思います。ジャパンフードタウンがニューヨーク、パリ、ロンドンなどにできて和食のイメージが上がれば、日本人としても誇らしい。一人の力ではできません。多くの人が参加してくれることが、成功確率を上げることになると思っています」

(撮影:梅谷秀司)

※ 吉川氏の取り組みは、6月27日(金)24時から放送されるBSフジ『birth of the cool』で詳しく特集します。

 

仲宇佐 ゆり フリーライター

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なかうさ ゆり / Yuri Nakausa

電機メーカー勤務、秘書などを経てライターに。ラジオ、アート、本などの記事や人物ルポを執筆

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