「住宅ローン減税」改正で還付金もらえるのは誰 複雑でわかりにくい制度になった歴史的経緯

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縮小

この政治的判断が最も顕著に表れたのが消費税率の引き上げ時だ。過去、増税されるたびに住宅ローン減税は見直されてきた。

マイホームは購入価格が高額なため、増税による「痛税感」は強い。そのため増税前に需要(先食い)が集中し、増税後には反動減で減退する。事実、消費税が8%に増税された年、新設住宅着工戸数は大きく減少した。そこで、税負担増による影響を緩和・平準化し、住宅政策の方向性が損なわれないようにする観点から、住宅ローン減税の拡充をはじめとする税制上の措置が講じられてきた。

具体的には2014年4月以降(8%増税時)、最大控除額が200万円から400万円へと倍増された。同時に、住民税からの控除上限額も9万7500円から13万6500円へと引き上げられた(2013年度税制改正)。

さらに、2019年10月以降(10%増税時)は住宅ローン減税の控除期間が10年から13年へと3年間延長された(2019年度税制改正)。利上げされた消費税2%負担分を、控除期間3年間の延長で穴埋めしようという発想だ。

コロナの影響を受けた人を救済

しかし、誰もが想定しない事態に直面した。突如、新型コロナウイルスが猛威を振るい始め、見えない恐怖が人々を苦しめた。出口の見えない経済不安が世界に蔓延し、冒頭で触れたようにわが国の住宅市場は縮小を余儀なくされた。

新型コロナの感染拡大でサプライチェーンは寸断し、建築資材や住宅設備の流通がストップした。その結果、建物の工事が停滞し、予定通りに住宅を引き渡せない事態となった。

住宅ローン減税には厳格な適用条件があり、控除期間3年延長(13年間)の適用を受けるには、消費税率10%が適用される住宅を取得し、2019年10月から2020年12月末までの間に入居する必要があった。ところが新型コロナの影響(住宅の引き渡し遅延)で、この適用条件を満たせない人が相次いだ。

そこで急遽、救済措置として「契約日」と「入居日」の弾力化が図られた。たとえ2020年12月末までに入居できなかったとしても、次の各要件を同時に満たせば、特例として期限内(2020年12月)に入居したのと同様の減税措置が受けられるようになった。つまり、控除期間13年間の住宅ローン減税が適用された。入居の遅延理由は下記どちらの場合も、新型コロナウイルスの影響である点が前提となる。

《注文建築により住宅を新築した場合/特例措置》
・消費税率10%が課税されていること
・2020年9月30日までに工事請負契約が締結されていること
・2021年12月31日までに入居すること(1年延長)
《新築または中古住宅の購入、増改築した場合/特例措置》
・消費税率10%が課税されていること
・2020年11月30日までに売買契約あるいはリフォーム工事契約が締結されていること
・2021年12月31日までに入居すること(1年延長)
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