ソニー復活? 3つの挑戦--知られざるビジネス変革[下]
難しい資本調達のタイミング
ソニーは中期計画の中で、今後3年間で電池事業に1000億円の投資を振り向けるとしているが、「自動車電池に本格参入すれば、投資は数千億円規模に膨らみうる」(大根田伸行CFO)。
この規模の投資には増資などエクイティ(株主資本)による調達が必要となる可能性が高いが、「この投資で必ず企業成長が生まれるという明確なストーリーが描けなければ、資本調達には踏み切れない」(同)。
かつて高性能半導体Cell(セル)への投資原資として転換社債を発行したものの、まったく株式に転換されず全額キャッシュで償還したという苦い経験を09年末にしたばかりでもある。自動車電池ではどのような技術先進性を持ち、どの企業と組み、そしてどれだけ投資に踏み切るのか、複雑な連立方程式を解かなければならない。
ストリンガー会長が指揮した5年間は、業績が乱高下し株価も大きくは回復せず、外部からは厳しい目を注がれた期間だった。その一方で内部では、ハード部門の組織を吉岡副社長と平井一夫執行役の下に二分したことで、事業部門ごとに対立しやすかった従来の社内文化を改められたという声もある。
「以前は製品の開発動向などは事業部門ごとの機密事項扱いだった。今は事業の壁がなくなり、情報やアイデアの交換が社内でしやすくなった」(開発技術者)。
3Dのような複数事業が手を携えるビジネスでは、こういった組織改革が下地となっている。
異色のリーダーが進めたビジネスと企業文化の変革は、独自のヒット商品がない時代でも着実に稼ぐための現実的な対応策である。この変革の後に、“ソニーらしさ”を追いかける時代につなげることができるか。あるいは、“総合電機の一社”に埋もれるのか。「復活」の向かう先はまだ見えない。
(杉本りうこ 撮影:今井康一、尾形文繁、吉野純治、風間仁一郎、谷川真紀子 =週刊東洋経済)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら