ソニー復活? 3つの挑戦--知られざるビジネス変革[下]
この戦略が新しいビジネスを呼び寄せている。
カナダ・トロントのブリス・ハイスクール。09年からリーダーを導入、現在は生徒の7割がリーダーを教科書として持ち歩いている。主要な教科書がEPUB形式でダウンロードされているほか、教師オリジナルのプリント類もワード文書などでネット経由で配布されている。
同校は複数の電子書籍端末がある中で最も対応フォーマットが幅広かったという理由でソニーを選んだとしており、「プリント印刷のコストがかからないなど、経済的効果も高い。10年はすべての生徒がリーダーに切り替える見通しだ」(同校事務局)という。
流通面でも他社との連携を指向した。専用の書籍販売サイト「リーダーストア」は、米国の大手書店チェーン「ボーダーズ」に外装だけを改める形で提供されている。
「電子書籍事業になるべく投資したくない書店チェーンの間では、こういったソリューションビジネスへの要望は高い。ソニーにとっても、販売サイトのFC店ができるようなもので、端末・コンテンツの販売拡大が見込める」(野口上級副社長)と、絵に描いたようなウィン・ウィンの関係であることを強調する。
試金石はコミック
リーダー事業は端末販売を軸としたビジネスモデルだが、コンテンツ配信自体も成長余地が高い。その手ごたえを感じさせるのが、ゲーム子会社のソニー・コンピュータエンタテインメントが09年末に始めたコミック配信。
プレイステーション・ポータブル(PSP)向けに「新世紀エヴァンゲリオン」などコミック約800本を国内で有料配信している。足元の利用状況では、「一度有料配信を受けると、同じ作者の作品を継続してダウンロードするなど、利用の連続性が高い」(正田純二・ネットワークビジネス&サービス部長)。