相模原事件があぶり出した日本の裁判の「異常」 知見や教訓を得ないまま「儀式化」が進んでいる

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でも彼は犯行前、殺戮(さつりく)予告の手紙を衆議院議長に手渡そうとして通報され、措置入院させられています。通常ならば、その前歴を理由に精神障害を疑われてもおかしくない存在。実際に手紙の中身は、自分はUFOを2回見たとか支離滅裂で、「作戦実行」の見返りとして逮捕後の監禁は最長2年で無罪放免、新しい名前と本籍、美容整形して社会復帰、金銭支援5億円の確約などを求めている。この時点ですでに常軌を逸しています。

公判初日にはいきなり「謝罪します」と叫び、小指をかみ切ろうとして制止された。そして翌早朝、独房内でかみちぎった。精神錯乱を装うパフォーマンスと解釈する人は少なくなかったけど、監視カメラから隠れて短時間で、関節までゴリゴリかみ砕くことがパフォーマンスでできるだろうか。少なくとも僕にはできない。

精神鑑定はほぼ添え物状態

──精神鑑定の結果は人格障害。判決文では「異常さまではうかがわれない」「理解できる範囲内」とし、完全責任能力を認めました。

責任能力の一点に論点が集約される裁判でした。そしてその大前提が、精神状態の正常異常を問わず極悪人は罰せられるべし、だった。責任能力を認定するためには被告は正常でなければならず、そのつじつま合わせに終始して、肝心の精神鑑定はほぼ添え物と化していた印象です。正常で責任能力があるというなら、そんな普通の人がなぜあれほどの凶行に及んだのか、そのメカニズムを分析すべきです。精神鑑定において生育歴の調査は重要な意味を持ちますが、植松の裁判ではほとんど触れていません。その結果として知見や教訓が集積されずに幕が引かれる。

以前は分厚かった精神鑑定書も、最近はA4判2、3枚の分量にしてくれと裁判所から指導されるという話を聞き驚いた。何百枚あっても説明しきれない人の心理を2、3枚で要約しろ、はないだろうと。

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