政治の闇を暴き続ける上脇博之教授の原動力 「劣等生」だから粘り強く活動を続けられた
2024年、事件が起きた。戦後長らく権力を形成してきた自民党の派閥が、雪崩を打つように解散したのだ。小さな石つぶてを放ち続けた大学教授の素顔に迫る。
神戸港の人工島、ポートアイランドにある神戸学院大学の構内に朝日が降り注いでいた。芝生の中庭を海風が吹き抜ける。
6月10日、法学部教授の上脇博之は、早朝に家を出て電車に乗り、大学に出勤していた。9時30分、大教室で憲法の授業を始める。
国民には『知る権利』がある
「皆さんも大切な情報を人から人へ口頭で伝えて伝言ゲームみたいになって、正確に届かなかった経験はありませんか。そういうとき、情報を文書にしておけば、客観的に共有できますね。膨大な情報が集まる政府となれば、なおさらです。公文書の作成、保存は議会制民主主義の根幹です。政府は、憲法が定めた国民主権の理念にのっとって、公文書を管理し、国民に説明する責務があります。国民には政府の情報を『知る権利』が保障されているのです」
教壇に立つ上脇は、紺のバンダナで頭を覆い、黒いスーツにネクタイを締め、背筋をピンと伸ばして語りかける。教室の席には40人ほどの学生が散らばって座り、耳を澄ませていた。
上脇は、金の力で政治が左右されると、国民主権や民主主義は成り立たないと危ぶむ。実際に政治家の金の使い方は不透明なまま開示されず、国民の知る権利が妨げられていると語った。
「例えば」と、政党から政治家に渡される「政策活動費」を挙げる。本来、国会議員への寄付は資金管理団体の収支報告書という公文書に記載しなくてはならないが、政策活動費は法の「解釈・運用」によって記さなくてもよいとされている。自民党では2017年に幹事長だった二階俊博に13億8290万円、22年に幹事長の茂木敏充に9億7160万円の政策活動費が払われたと上脇は指摘する。いずれも国政選挙の年だ。
学生たちは、上脇の講義をどう受けとめているのだろうか。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら