肉食ダイエットに励む人が見落す不都合な真実 食べすぎも食べなさすぎも健康に害をおよぼす

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ダイエット目的で、赤肉をたくさん食べることを勧める本やネット記事などがあります。日本人は赤肉の消費量が少ないので、それほど心配いらないとはいえ、たくさん食べると発がんの可能性もありますし、また、心臓病のリスクにもなることがわかっています。ほどほどな量にとどめておくのがいいでしょう。

赤肉が、がんのリスクになることは、欧米での多くの研究でエビデンスが示されており、信頼性は高いと言えます。

『「エビデンス」の落とし穴』(青春出版社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

しかし、前述のように、日本人においては、赤肉や加工肉の摂取量が欧米と比べると少ないので、それほど大きなリスクとは言えません。食べすぎなければ、大きな問題にはならないと言えます。

しかし、毎日のように大量に食べている人は、週500g以下に抑えるようにしたほうがいいでしょう。また、日本人で一生のうちに大腸がんになるのは12人に1人ですが、「がんのリスクが1.2倍程度上がる」とするとき、生涯で大腸がんになる確率が12人のうち1.2人になる程度です(そもそも、12人に1人というのは、赤肉だけでなく、あらゆるリスクの人を含んだ計算であり、ざっくりした数字だと思ってください)。この数字を見ると、「それほど変わらない」と思う人もいるのではないでしょうか。

「ゼロか百か」に陥ってはならない

また、その一方で、「赤肉はまったく健康に問題がない」という論文に関しては、エビデンスの信頼性は低いと言えるでしょう。

逆に、発がんや心臓病が怖いからまったく食べない、という選択をすると、人によってはビタミンやタンパク質が欠乏してしまう可能性もあるので、「ゼロか百か」という極端な選択に走ることなく、バランスのよい食生活をしたほうがいいでしょう。

(※1)Chao A et al. Meat Consumption and Risk of Colorectal Cancer.JAMA. 2005;293(2):172-182.
(※2)IARC Monographs Volume 114: Evaluation of consumption of red meat and processed meat, 2015
(※3)Islam Z et al. Meat subtypes and colorectal cancer risk: A pooled analysis of 6 cohort studies in Japan.Cancer Sci. 2019; 110(11): 3603–3614.
(※4)Recommendations and public health and policy implications, WCRF and AICR ,2018
松村 むつみ 医師・医療ジャーナリスト

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まつむら むつみ / Mutsumi Matsumura

1977年愛知県生まれ。医師・医学博士・医療ジャーナリスト。2003年、名古屋大学医学部医学科卒。03年、国立国際医療センター(現・国立国際医療研究センター)臨床研修医。06年、横浜市立大学病院附属市民総合医療センターの放射線医学教室に入局、勤務医として大学病院に従事しながら研究を続け、放射線診断専門医、核医学専門医、博士号(医学)を取得。17年よりフリーランスの画像診断医に。同時期より各種メディアに医療記事を執筆。一般の人への医療リテラシー向上に貢献するべく幅広く活動している。日本医学ジャーナリスト協会会員、アメリカヘルスケアジャーナリスト協会会員。

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