肉食ダイエットに励む人が見落す不都合な真実 食べすぎも食べなさすぎも健康に害をおよぼす

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IARC(国際がん研究機関)は、発がん性物質を5段階に分類しています。IARCとは、WHOの中の、がんに特化した専門的な機関です。これまでの研究の知見を結集、統合して、がんの原因特定や発がん抑制の研究を行っている機関です。

IARC(国際がん研究機関)による 発がんリスク評価(図表:『「エビデンス」の落とし穴』(青春出版社)より)

赤肉は、これまでの研究で、大腸がんなどに関して、おもに欧米で、リスクの上昇が指摘されてきました(※1)。

ただし、これまでの研究では、赤肉を食べると発がんリスクは上昇するが、その上昇は1.2倍程度という研究結果もあり、それほど顕著ではないとしています。そのためIARCは、赤肉に関しては、がんのリスクを「グループ2A」に位置づけています(ちなみに加工肉はよりリスクが高い「グループ1」です)(※2)。

日本人においても、赤肉での大腸がんリスクは示唆されています(※3)。国立がん研究センター予防研究グループが行った、いくつかの研究を統合した解析では、男性では、牛肉の摂取が多いグループで、少ないグループの1.3倍強くらい結腸がんのリスクが高く、女性では、牛肉の摂取が多いグループは、少ないグループと比較して1.2倍の結腸がんリスクと結論づけられています。

また、女性では、加工肉のリスクや、豚肉を週3回以上食べる人での上昇も示唆されています。しかし、この研究では、「具体的にどれくらいの量を食べればいいのか」に関しては結果が出ていません。

赤肉は「週500g以内」に控えたほうがいい

リスクを考えるときは、「発がんするかどうか」に関してだけではなく、「実際に、どの程度リスクが上昇するか」を考える必要があります。

世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)は、その報告書で、赤肉は調理後の重量で週500g以内、加工肉はできるだけ控えるように、と勧告しています(※4)。

しかし、欧米に比べて、日本人は赤肉や加工肉の消費は少なく、世界でも肉を食べないほうの国です。2013年の国民健康・栄養調査によると、日本人の赤肉・加工肉の摂取量は一日あたり63g(うち、赤肉は50g、加工肉は13g)で、多くの日本人が週500gを下回っています。食べすぎなければそれほどリスクを気にしなくてもいいかもしれません。

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