結局「自動運転」はいつどのように実現するのか 6Gの時代をリアルに想像することの重要性

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その肝となりそうなのが、レーザーの反射で距離を測定する「LiDAR(ライダー)」だ。これは「Light Detection and Ranging」の略語だ。

仕組みは先ほどのミリ波レーダーと似ており、レーザー光線をセンサーから発して、モノに当たってからセンサーに戻ってくるまでの時間で距離を計測する。ミリ波との違いは、波長の短い赤外線のレーザーを使っている点だ。ミリ波レーダーに比べて、小さな物体も検知できるのが特徴といわれている。

このライダーはコストが高いのがネックだ。構造が複雑なものは数百万円する。なので、今のところは、実験車両や地図データを取得するための作業車両などにしか搭載できない。ただ、最近になり参入企業が増え、ライダー専業のスタートアップだけでも世界に100社程度生まれている。つまり、それだけ有望なテクノロジーだということで、今後、小型化・低価格化は急ピッチで進むだろう。

こう書くと、あまり実感が湧かないかもしれないが、このライダーはあなたにとって実は身近な存在だ。ライダーは2020年10月に発売された「iPhone12」のProシリーズに搭載されている。「12」のカメラ性能の高さに驚いた人もいるだろうが、その一因はライダーだ。

「12」の特徴は、人物と背景の境界の鮮明さだ。これは、空間の3Dオブジェクト(立体物)を個別に識別することができるようになっているからだ。床、壁、天井、窓、ドア、いす、机などを、それぞれ個別のオブジェクトとして認識しているのだ。

すでに身近にある自動運転の要素技術

この、人物や物体の位置を正確に判断できるライダーの技術があれば、これから、写真やCGの合成も違和感なくできるようになるし、ARもより身近になるだろう。ライダーは、一部メーカーの業務用掃除ロボットにも搭載されている。

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スマホに搭載されているライダーと自動車向けではしくみが一部異なるが、基本性能は同じだ。「新しいテクノロジーは突然現れない」と述べてきたが、ここでも、すでに自動運転の要素技術はわれわれの身近に転がっている。

そして、このようなセンサーを搭載した自動運転車が走るのは地球だけではなくなっているだろう。トヨタ自動車はJAXA(宇宙航空研究開発機構)やNASA(アメリカ航空宇宙局)、CNSA(中国国家航天局)、ESA(欧州宇宙機関)などが2040年を目標に検討する月面基地建設プロジェクトに参画している。自動運転技術を使って、月面の移動手段などを提供する方針だ。

自動運転1つとっても、そのテクノロジーはさまざまな広がりがある。本書にはほかのテクノロジーもいろいろと紹介しているので、興味があったらぜひ確認してほしい。

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