異色の経歴で昆虫界を盛り上げる男の仕事観 餌を運ぶ「働きアリ」に自分の姿を重ねていた

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おかげさまで、いつもの本とは違って、大人のビジネスパーソンの方々が読者層になってくださっていますし、サイン会では、年配の管理職の方にもよくお会います。

みなさんやはり、「女王アリ」である社長のもとで、先輩に指導されながら「働きアリ」として歩んできたということもあって、共感されるのだと思います。管理職ってとても大変な仕事でもありますよね。

僕も会社員として働いたことで、この本を描くことができてよかったですし、僕のように大変な仕事をしてきた方々と、気持ちを共有できればと思います。

中学時代の苦い経験が活きた

本を出すということは、締め切りのなかで戦うということですが、今後は、締め切りのない作品にも取り組んでいきたいです。

ほかの仕事でも同じですが、お願いされたことだけをやりつづけているとモチベーションをキープできません。僕は、自分が興味を持って、自発的に企画したものにはものすごく力を発揮できます。岡本太郎賞の5メートルの作品もそうで、お金を払うからと言われてやれることではありません。

(写真:著者提供)

それから、虫としてのキャラクターをもっと広げていきたいです。

僕、中学生の体育祭で、応援旗の班のリーダーになったことがあるんです。応援旗のモチーフといえば、たいてい、かっこいいトラやライオンが定番ですが、僕は、カブトムシのヘラクレスがいいと思っていました。

ところが、クラスの虫が苦手な子たちが「カブトムシなんか踏めば死ぬ生き物です」「人間でも殺せると思います」なんて言われて……。しかも、最終的なモチーフは、自由の女神になってしまったんです。自由の女神は確かに踏んでも死にませんが、まさかのモチーフに敗北でした(苦笑)。

だから、カブトムシのような虫が、キャラクターとしてもっと認知されるように頑張りたいです。100円ショップに並ぶパッケージなどに、見たことがある虫のキャラクターがいてもいいですよね。

虫はとてつもなく深い世界です。カブトムシにはカブトムシの、クワガタにはクワガタを深く研究している専門家がいて、それでもまだまだ把握しきれないほど虫がいます。僕の描いたイラストをきっかけに、好きな虫を見つけてくれた人が、ちょっとでも専門の世界に興味を持つようになってくれたらと思っています。

(構成/泉美木蘭)

じゅえき 太郎 イラストレーター、画家、漫画家

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じゅえき たろう / Jueki Taro

1988年東京都生まれ。第19回岡本太郎現代芸術賞入選。身近な虫をモチーフにさまざまな作品を制作している。SNS総フォロワー数は約30万人。著書に『ゆるふわ昆虫図鑑』(宝島社)、『昆虫戯画びっくり雑学事典』(丸山宗利氏共著/大泉書店)、『ゆるふわ昆虫図鑑 ボクらはゆるく生きている』(KADOKAWA)など多数。

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