異色の経歴で昆虫界を盛り上げる男の仕事観 餌を運ぶ「働きアリ」に自分の姿を重ねていた

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やがて300万円の貯金も尽きて、グッズメーカーで働いた時期もありましたが、僕の漫画を見ていただいた出版社から、本にしませんかとお話をいただき、それからはずっと毎日漫画を描き続けて、いまに至ります。

自分の熱がいちばん入る題材を見つける

僕が虫をテーマにするのは、もちろん虫が好きだからですが、イラストレーターとして、新しいことをやりたいという思いもあります。

イラストは動物を描いたほうが喜ばれるという思い込みが僕自身にあったんです。猫はかわいいし、ライオンはかっこいい。つまりグッズにもなりやすいですからね。虫グッズよりも動物グッズのほうが圧倒的に多いですよね、動物の市場は大きいのです。

僕も学生の頃、上野動物園の年パスを買って、動物を描きに通っていました。でもあるとき、「これではアフリカの人々には勝てない」と思ったんです。そこらじゅうに動物がいる自然環境のなかで動物を描くのと、動物園にいる動物を描くのとでは、思い入れがまったく違うとその頃は感じていたのです(現在は考え方が変わり動物園の動物には野生とは違った魅力があると感じていて、それを描くこともすばらしいことだと考えています)。

絵画は、どんな人生を歩んできて、この絵を描くに至ったのかという経緯も作品のレベルを上げる要素になると思っています。技術の上に熱が入ると言いますか。

「イカの夢しか見ていない」という人が、イカを描いているというすごい世界でもあるんですよ。そこに対して「人気があるから動物を描く」という考えでは到底太刀打ちできないと思ったのです。

僕は、子どもの頃から喘息で、動物を飼うことができませんでしたし、虫を観察してきて、虫とりに夢中になり、幼いころからずっと昆虫を飼っています。そんな自分なら自分に根差している虫を描こう、そう思ったんです。

(写真:著者提供)
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