「ゲームストップ騒動」示す侮れない社会の変化 エリートへの反乱が起こりやすくなっている

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そのパターンとは、こうだ。ある日、あるグループが、ある体制に対して「あいつらは道義にもとる行為に手を染めている、腐敗している」と考えて、行動を起こすことを決意する。

グループのメンバーは、突出した空売りポジション、脆弱化した政党、リスクをとらない映画スタジオ幹部など、攻撃対象が抱える構造的な弱点を見つけ出し、こうした弱点にあの手この手のクリエイティブな方法でつけ込み、ソーシャルメディアを武器に世の中の注目をかっさらう。

そして、やる気満々の人々を大量に巻き込み、いっせいに同じ方向へと力を加えることで、最終的に標的をねじ伏せる。あるいは、反乱勢力が「勝った」と思えるだけの注目をゲットする。

スマホに陥落させられた「金融エリートの要塞」

しかしウォール街は、オンラインのポピュリスト勢力がなかなか攻め入ることのできない標的の1つとして、最後まで持ちこたえていた。理由の一端は、参入障壁の高さにある。ネット環境とツイッターのアカウントさえあれば、誰でもハッシュタグ運動を始められるが、株式の売買には資金と一定程度の専門知識が必要だ。それに、いろいろと手間もかかる。要するに、株式のトレーディングは基本的に玄人筋でなければ手が出しづらい領域だったのである。

これを一変させたのが、「ロビンフッド」のようなスマートフォンで使える手数料無料の投資アプリだ。このようなアプリを使えば、ウーバーイーツでブリトーの宅配を注文するような感覚で、いとも簡単に「ガンマスクイーズ」を仕掛けることができる。

かくして、大量の素人が連携して自らの投資テーマをつくり出し、レディットのスレッドやティックトックの動画を通じて大盛り上がりとなり、大物ギャンブラーが居並ぶ金融カジノにどかどかと乗り込んで大ばくちを打つ光景が見られるようになった(おまけに、この素人集団の最大の狙いは、ギャンブルで儲けることとはまるで違うところにあるのだ)。

ゲームストップ株をめぐる騒動を眺めながら、私は元CIA(中央情報局)分析官のマーティン・グリ氏が「民衆の反乱」と呼んでいる現象に思いをめぐらせていた。

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