ご存じの方も多くいると思いますが、ペストは人類が遭遇した最大の厄災の1つと言えるでしょう。最初の記録として残る6世紀のパンデミックでは、コンスタンチノープルで1日5000人~1万人が死亡。これまでにペストの世界的大流行は3度あり、黒死病として世界史の教科書に登場するのは、14世紀から始まる第2次流行で、130年以上にわたりヨーロッパ各地を襲い続けました。このパンデミックによって、ヨーロッパの人口の3分の1が死亡したそうです。
行動のヒントになる登場人物3人
この『ペスト』から、私たちの行動へのヒントとなる人物3人を紹介しましょう。舞台であるオラン市の医師会会長リシャール、下級役人グラン、そしてタルーです。
ほかの2人と違い、リシャールは反面教師です。とはいえ、彼と同じような行動をしている人に、きっと皆さんは思い当たるはずです。そうなってはいけない、ということを知らしめるのに格好の人物です。
リシャールはペスト発生初期、同じ医師の主人公リウーと対策会議で争います。「このままだと2カ月以内に市民の半数が死亡するでしょう。これをペストと呼ぶかどうかなんて、問題ではない。これは時間の問題なのです。ためらっている場合ではない」と行動を促すリウーに対して、リシャールは「冷静になりましょう」と間の抜けた発言をします。
リシャールと同じ側に県知事がいました。県知事は「大げさにならないようにしましょう」と、これまたトンチンカンなことを言います。リウーに向かって、「君は、これがペストでなくてもペストの際にしなければならない措置を取らねばならない、と考えているのですね」と、まるで他人事でした。
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