名著ペストに学ぶ「長いコロナ禍」を生き抜く力 不条理の時代を生きるための行動のヒント

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リシャールたちの共通点は、指示待ち、責任回避、保身。この共通点がコロナ禍中にいる僕たちへのヒントになりそうです。彼らは自ら動こうとまったくしませんでした。自分たちで責任を負いたくないばかりに、自分たちより上の権威(フランス本国)に頼ろうとします。すでにタイムリミットなどない緊迫感の中で、椅子に座ったままいたずらに時間を浪費する……。

では、彼らを反面教師にすると、どうなるでしょう? この答えが、第1のヒントになります。

「頼るべきは自分である。すべきことを決めるのは、ほかの誰でもなく、自分である」

『ペスト』唯一のヒーロー

さて、2人目はグランです。グランは、身長も低く、妻に逃げられた、地位も経済力もない下級役人でした。しかも、グランは、保健隊に参加したほかのメンバーよりも年を取っていました。体力もずいぶん、劣っています。

そんな彼が、『ペスト』の中にいる唯一のヒーローとして、カミュから指名されたのです。彼は「自分はささやかな仕事で役に立ちたい」と保健隊入りを志願しました。患者の所在、往診の記録、患者や死者の運搬の指示など、状況の整理とデータ管理をグランが担いました。こうしてリウーやタルー以上に、グランは保健隊になくてはならない存在となっていました。

彼の行動原理は、この発言に現れています。
「ペストが発生してしまった以上、ペストからわたしたちを守らなきゃなりません。すべきことは、これほどはっきりしているんです」

「自分のすべきことははっきりしている」と断言する彼は、自分にできることに誠実に向き合いました。医師であるリウーやカステルのような専門的な役でもなく、タルーやランベールのような体力を要す役でもなく、彼が自らに課した役目は、ほかの誰でもできるかもしれないが、なくてはならない仕事でした。

このグランが示すのが、第2のヒントです。

「小さなことでもいい。無理をせず身の程に合ったことをやる」

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